リースバックで家を売って住み続けているけれど、家賃の支払いが苦しくなってきた。来月の家賃が払えないかもしれない。そんな状況で「滞納したらすぐに追い出されるのでは」と、眠れない思いをしている方もいるのではないでしょうか。
先にお伝えしておくと、リースバックの家賃が払えなくなっても、1回や2回の滞納ですぐに追い出されることはありません。借主は法律で守られており、退去までには段階と時間があります。ただし、何もせずに放置すれば、おおむね3か月で契約を解除され、半年ほどで退去を求められる流れになります。いちばん大切なのは、滞納する前に動くことです。
この記事では、家賃滞納から退去までの流れと期間、借主を守る3つのルール、家賃が払えないときの3つの対処法、やってはいけないこと、相談できる窓口、これから契約する方が滞納を防ぐためのチェックまで整理しました。監修は、訳あり不動産を中心に1,500件以上の相談を解決してきた宅地建物取引士の桐生辰宏です。

年金が減って、来月の家賃が足りそうにありません。業者に言ったら、すぐ出ていけと言われないか怖いです。



払えなくなる前に相談してくれる借主を、業者はむしろ歓迎します。黙って滞納されるのが一番困るんです。まずは状況を正直に伝えるところから始めましょう。
リースバックの家賃が払えなくなったら|まず知っておきたい結論
リースバックで家を売った後は、法律上は普通の賃貸住宅の借主と同じ立場です。家賃の滞納についても、通常の賃貸と同じルールが適用されます。
- 1〜2か月の滞納で、すぐに契約を解除されることは通常ない
- 放置すると、約3か月で契約解除、約6か月で退去という流れになる
- 滞納する前に業者へ連絡すれば、支払いの猶予や分割に応じてもらえる余地がある
リースバックの仕組みそのものは、以下のピラー記事で整理しています。


リースバックの家賃滞納から退去までの流れと期間
滞納が続いた場合、一般的には次のような段階を踏んで進みます。期間は業者や保証会社によって前後しますが、おおよその目安として見てください。
| 時期の目安 | 起きること | この段階でできること |
|---|---|---|
| 滞納1か月目 | 業者や管理会社から電話・書面で督促。保証会社がある場合は保証会社が立て替え、以後は保証会社から請求が来る | 業者・保証会社に事情を伝え、支払い計画を相談する |
| 滞納2か月目 | 督促が強まり、内容証明郵便で支払いを求められることがある | 分割払いの合意、公的支援の申請 |
| 滞納3か月目前後 | 期限を定めた支払いの催告のうえ、賃貸借契約の解除を通知される | 解除前なら支払いで解除を避けられる余地がある |
| 解除後 | 明け渡しを求められる。応じなければ明け渡し請求の訴訟 | 退去時期の交渉、住み替え先の確保 |
| 解除から数か月後 | 判決に基づく強制執行で明け渡し | - |
契約解除までに約3か月、訴訟や強制執行まで進むと退去まで半年前後かかるのが一般的です。この期間は「猶予」でもあり、動けば状況を変えられる時間でもあります。
普通借家でも定期借家でも滞納のルールは同じ
普通借家契約は借主が希望すれば更新できる契約ですが、家賃を払わない場合まで守られるわけではありません。滞納を理由とする解除は、普通借家でも定期借家でも同じように認められます。契約の種類ごとの違いは、以下の記事で解説しています。


滞納すると買戻しの権利にも影響する
買戻し特約を付けている場合、契約書に「家賃の滞納があれば買戻しの権利を失う」といった条件が入っていることがあります。将来の買戻しを考えている方は、契約書の該当条項を確認してください。買戻しの仕組みについては、以下の記事を参照してください。


すぐに追い出されることはない|借主を守る3つのルール
「滞納したら鍵を替えられて締め出されるのでは」という不安を持つ方は少なくありません。実際には、家主側が一方的に借主を追い出すことは法律で厳しく制限されています。
ルール①信頼関係が壊れるまで契約は解除できない
賃貸借契約は長く続く関係なので、裁判所は「貸主と借主の信頼関係が壊れたといえるか」を基準に解除の可否を判断してきました(信頼関係破壊の法理)。1か月程度の遅れでは、通常この基準を満たしません。一般的には3か月程度の滞納が1つの目安とされ、それまでの支払い状況や、滞納後に誠実に対応しているかも考慮されます。
ルール②鍵の交換や荷物の撤去など「自力での追い出し」は違法
契約が解除されたあとでも、貸主が裁判の手続きを経ずに借主を追い出すことは認められていません(自力救済の禁止)。無断で鍵を交換する、家財を運び出す、ドアに督促の張り紙をするといった行為は、違法と判断される可能性があります。こうした対応をされた場合は、記録を残して消費生活センターや弁護士に相談してください。
ルール③家賃保証会社の「追い出し条項」は最高裁が無効と判断
2022年12月、最高裁判所は、ある家賃保証会社の契約書にあった2つの条項を、消費者契約法に反して無効と判断しました。1つは家賃を3か月以上滞納すると保証会社が催告なしに賃貸借契約を解除できるという条項、もう1つは一定の条件を満たせば借主が家を明け渡したものとみなすという条項です。保証会社であっても、手続きを飛ばして借主を追い出すことはできないという流れが、司法の場でもはっきり示されています。



法律で守られているといっても、滞納が消えるわけではありません。守られている期間を「解決のための時間」として使ってください。
リースバックの家賃が払えないときの3つの対処法
家賃が苦しいと感じたら、次の3つを順番に検討してください。早く動くほど、選べる手段は多くなります。
対処法①業者に早めに相談する
業者にとって、借主が長く住み続けて家賃を払ってくれることは収益の柱です。滞納が続いて退去となれば、訴訟や空室の期間でかえって損をします。そのため、払えなくなる前に相談してくれる借主とは、条件を調整してでも関係を続けたいと考えるのが普通です。
- 支払い期日の猶予。年金の支給日に合わせて支払日をずらしてもらう
- 滞納分の分割払い。遅れた分を数か月に分けて返す計画を合意する
- 家賃の見直し。周辺の賃貸相場より大きく高い場合は、減額を相談する
相談するときは、なぜ払えなくなったのか、いつまでにいくら払えるのかを具体的に伝えてください。合意した内容は、口頭ではなく書面かメールで残しておきましょう。家賃がどう決まり、どこまで交渉できるかは以下の記事で解説しています。


対処法②公的支援を使う
家賃の支払いが難しくなったときに使える公的な制度があります。ただし、対象になる条件はそれぞれ異なります。
| 制度 | 内容 | 主な条件 | 窓口 |
|---|---|---|---|
| 住居確保給付金(家賃補助) | 市区町村が定める上限額まで家賃を原則3か月、最長9か月支給(東京23区の単身世帯で月5万3,700円が上限) | 離職・廃業から2年以内、またはそれに近い収入の減少。収入と預貯金が基準以下。求職活動を行う | 自立相談支援機関 |
| 住居確保給付金(転居費用の補助) | 家賃の安い住まいへ移る際の引越し代や礼金などを補助(2025年4月から) | 収入が減り、家計の改善のために転居が必要と認められること | 自立相談支援機関 |
| 生活保護(住宅扶助) | 生活費とは別に、上限額の範囲で家賃を支給 | 世帯の収入と資産が最低生活費を下回ること | 福祉事務所 |
住居確保給付金の家賃補助は、離職や収入の減少と求職活動が前提のため、年金生活の方は対象外になることが多い点に注意してください。転居費用の補助は求職活動を必要としないため、状況によっては対象になる可能性があります。
生活保護を受ける場合、家賃は住宅扶助として上限の範囲で支給される仕組みです。リースバックの家賃は売却価格から計算されるため、この上限を超えていることが多く、上限内の住まいへの転居を求められることも考えられます。いずれの制度も、要件は自治体ごとに細かく異なるので、まずは窓口で相談してください。
対処法③売却代金が残るうちに住み替える
今の家賃を払い続けるのが根本的に難しいなら、家賃の安い住まいや施設への住み替えも選択肢です。ポイントは、売却代金が手元に残っているうちに動くこと。引越しや新居の初期費用に充てられる資金があれば、住み替え先の選択肢も広がります。滞納が進んで契約を解除されてからでは、次の住まいを探す時間も資金も限られてしまいます。
普通借家契約なら、借主からの解約は予告期間(多くは1か月前)を守れば可能です。定期借家契約でも、療養や親族の介護などやむを得ない事情があれば、中途解約が認められる場合があります。
家賃が払えないときにやってはいけない3つのこと
追い詰められると、目の前の支払いを乗り切ることだけに意識が向きがちです。次の3つは、かえって状況を悪くするので避けてください。
カードローンやクレジットカードで家賃を払う
家賃を借金で埋めると、翌月には家賃と返済の両方がのしかかります。収入が増える見込みがない限り、借金が膨らむだけで問題は先送りにしかなりません。一時的な収入の遅れを埋めるのでなければ、借りて払うのではなく、業者との支払い計画の見直しや公的支援を優先してください。
業者や保証会社からの連絡を無視する
電話に出ない、郵便を開けない。気持ちは分かりますが、連絡を絶つと「支払う意思がない」と受け取られ、信頼関係が壊れたと判断される大きな要因になります。払えない状況でも、連絡には応じて事情を伝えることが、結果的に自分を守ります。
違法な取り立てや退去の要求に従ってしまう
深夜の訪問、職場や家族への執拗な連絡、「今日中に出ていけ」といった要求は、正当な手続きではありません。慌てて家財を処分したり、不利な合意書に署名したりしないでください。その場で決めず、消費生活センターや弁護士に相談してから対応しましょう。
リースバックの家賃滞納で頼れる相談窓口
一人で抱え込まず、状況に合った窓口に相談してください。相談は無料のところがほとんどです。
| 窓口 | 相談できること | 連絡先の探し方 |
|---|---|---|
| リースバック業者・管理会社 | 支払い猶予、分割払い、家賃の見直し、退去時期 | 賃貸借契約書に記載の連絡先 |
| 自立相談支援機関 | 家計の立て直し、住居確保給付金の申請、就労の支援 | 市区町村の福祉担当課に問い合わせる |
| 福祉事務所 | 生活保護の申請 | 市区町村の役所 |
| 法テラス(日本司法支援センター) | 契約解除や明け渡し請求への対応、債務整理。収入が一定以下なら無料の法律相談 | 法テラスのサポートダイヤル |
| 消費生活センター | 違法な取り立てや不当な契約条項 | 消費者ホットライン「188」 |
リースバックで起きやすいトラブルの事例と、それぞれの相談先は以下の記事でも整理しています。


これから契約する人へ|家賃滞納を防ぐ契約前のチェック
まだリースバックを契約していない方は、家賃が払えなくなる事態そのものを契約前に防げます。確認してほしいのは次の4点です。
- 家賃が年金や収入の手取りの何%か。25%以内なら安全、35%を超えると危険
- 家賃の不足分を売却代金で補う場合、その資金が何年もつか
- 家賃改定の条項。更新や再契約のたびに値上げされる余地がないか
- 売却代金から差し引かれる費用と、実際に手元に残る金額
年金生活での家賃の安全ラインと、売却代金の持続年数の計算方法は、以下の記事で詳しく解説しています。


手元に残る金額の計算方法はこちらにまとめました。


家賃負担を含めたリースバックのデメリット全体は、以下の記事でチェックリストにしています。


リースバックの家賃が払えないときのよくある質問
- 家賃の支払いが1か月遅れたら、すぐに退去になりますか?
-
1か月の遅れで直ちに契約を解除されることは通常ありません。賃貸借契約の解除には、貸主と借主の信頼関係が壊れたといえる事情が必要とされ、一般的には3か月程度の滞納が目安です。ただし遅れが続くと督促や保証会社からの請求が始まるため、遅れると分かった時点で業者に連絡してください。
- 家賃保証会社から連絡が来たらどうすればいいですか?
-
保証会社が滞納分を立て替えた場合、以後の請求は保証会社から届きます。連絡は無視せず、いつまでにいくら払えるかを具体的に伝え、分割での支払いを相談してください。深夜の訪問や家族・職場への執拗な連絡など、行き過ぎた取り立てがあれば消費生活センター(188)に相談できます。
- 年金生活でも住居確保給付金は使えますか?
-
家賃補助の住居確保給付金は、離職や廃業、それに近い収入の減少があり、求職活動を行うことが条件のため、年金だけで生活している方は対象外になることが多いのが実情です。2025年4月から始まった転居費用の補助は求職活動を条件としていないため、状況によっては対象になる場合があります。お住まいの地域の自立相談支援機関に確認してください。
- 生活保護を受けたらリースバックの家に住み続けられますか?
-
生活保護の家賃は住宅扶助として上限額の範囲で支給されます。リースバックの家賃が上限を超えている場合は、上限内の住まいへの転居を求められる可能性があります。上限額は地域や世帯の人数で異なるため、福祉事務所で自分の場合の金額を確認したうえで判断してください。
- 契約を解除されたら、すぐに家を出なければなりませんか?
-
解除後も、貸主が裁判の手続きを経ずに鍵を替えたり家財を運び出したりすることは認められていません。実際に明け渡しを強制されるのは、訴訟で判決を得たうえでの強制執行によるもので、解除から数か月かかるのが一般的です。その間に退去時期を交渉したり、住み替え先を確保したりすることができます。
まとめ|家賃が払えないときは「滞納する前に相談」がすべてを分ける
リースバックの家賃が払えなくなっても、すぐに追い出されることはありません。借主は信頼関係破壊の法理や自力救済の禁止によって守られており、退去までには段階と時間があります。その時間を、業者への相談、公的支援の申請、住み替えの準備に使ってください。いちばん選択肢が多いのは、滞納する前です。
- 1〜2か月の滞納ですぐ解除にはならない。放置すると約3か月で解除、約6か月で退去の流れ
- 鍵の交換や家財の撤去など自力での追い出しは違法。保証会社の追い出し条項も最高裁が無効と判断
- 対処法は業者への早めの相談、公的支援、売却代金が残るうちの住み替えの3つ
- カードローンで家賃を払う、連絡を無視する、違法な要求に従うのは避ける
- 自立相談支援機関・福祉事務所・法テラス・消費生活センター(188)に無料で相談できる
株式会社CLOUD HOMeでは、宅地建物取引士が1,500件以上の訳あり不動産の相談を扱ってきた経験をもとに、リースバック後の住み替えや家賃負担の見直しについてもご相談をお受けしています。他社でリースバックを契約された方のご相談も歓迎です。










