「いつかお金に余裕ができたら、この家を買い戻したい」。リースバックを検討する人の多くが、そう考えています。ところが実際には、買い戻しを希望していたのに応じてもらえなかったというトラブルが少なくありません。
リースバックの買い戻しは、契約時に権利を設定していなければ実現しないからです。この記事では、買い戻し価格の相場(売却額の1.1〜1.3倍)と計算例、買戻特約と再売買の予約という2つの権利の違い、買い戻せなくなるケースまで具体的に解説します。

営業の人に「買い戻しもできますよ」と言われたんですが、それだけで安心していいんでしょうか?



口頭の説明だけだと危険です。契約書に何と書かれているかで、買い戻せるかどうかが決まります。順番に確認していきましょう。
リースバックの基本的な仕組みから知りたい方は、こちらの記事もあわせてどうぞ。


リースバックした自宅は買い戻せる?結論と前提条件
結論からいうと、リースバックした自宅の買い戻しは可能です。ただし、条件付きの「可能」なんです。
買い戻しは「オプション」であって当然の権利ではない
まず理解しておきたいのは、リースバックで自宅を売却した時点で、所有権は完全に買主である業者に移っているということ。売った相手の持ち物になった不動産を、元の持ち主だからという理由で取り戻せるわけではありません。
買い戻しはあくまでリースバック契約に付けられるオプションで、業者によっては最初から買い戻しに対応していないところもあります。買い戻しを希望するなら、業者選びの段階から条件に入れておく必要があるということです。
契約時に権利を設定していないと買い戻せない
買い戻しを確実にするには、売買契約と同時に「買戻特約」または「再売買の予約」という権利を設定します。どちらも売主が将来その不動産を取り戻せるようにする法的な仕組みで、契約書への明記が前提です。
逆にいえば、権利を設定しないまま契約すると、買い戻しは業者の任意の判断に委ねられます。「そのときに相談してください」と言われて契約し、いざ買い戻したいと申し出たら断られた、あるいは想定外の高値を提示された。こうした相談が実際に寄せられているんです。
- 買い戻しに対応している業者を選ぶこと
- 売買契約と同時に買い戻しの権利を設定すること
- 価格・期限・条件を契約書に明記してもらうこと
買い戻しをめぐるトラブルの実例は、こちらの記事で詳しく紹介しています。


買い戻しの2つの方式|買戻特約と再売買の予約の違い
買い戻しの権利には、法律上まったく別の2つの方式があります。名前が似ているせいで混同されがちですが、使える条件も価格の決め方も違うので、ここは丁寧に押さえておきましょう。
買戻特約(民法579条)の仕組みと制約
買戻特約は民法579条に定められた制度で、売主が代金と契約費用を返還することで売買契約そのものを解除し、不動産を取り戻す仕組みです。売買契約と同時に結ぶ必要があり、所有権移転登記と同時に登記すれば第三者にも権利を主張できます。
ただし制約もあります。買戻しの期間は最長10年で、10年を超える期間を定めても10年に短縮されるうえ、期間の更新は認められません。期間を定めなかった場合は5年です。もともと融資の担保として使われてきた制度なので、代金の額にも歴史的な縛りがありました。民法改正により、現在は当事者の合意で買戻しの代金額を定められるようになっています。
再売買の予約が実務で使われる理由
一方の再売買の予約は、「将来もう一度売買契約を結びましょう」という約束を先にしておく方法です。民法579条の枠外なので期間や代金額の制限がなく、当事者同士で自由に条件を設計できます。リースバックの実務でよく使われるのはこちらです。
再売買の予約は買戻特約のような専用の登記制度がありませんが、所有権移転請求権の保全を目的とした仮登記を入れておけば、第三者に転売されたときの備えになります。「再売買予約権を設定します」と言われたら、仮登記まで入れてもらえるか確認するのがポイントです。
どちらで契約すべきか【比較表】
| 項目 | 買戻特約 | 再売買の予約 |
|---|---|---|
| 法的性質 | 売買契約の解除 | 新たな売買契約の予約 |
| 根拠 | 民法579条 | 民法上の予約の一般規定 |
| 期間の制限 | 最長10年(定めなければ5年) | 制限なし(合意で設定) |
| 価格の自由度 | 合意で定められる | 自由に設定可能 |
| 登記 | 買戻特約の登記が可能 | 仮登記で保全 |
| 実務での利用 | 公的機関の分譲などが中心 | リースバックで一般的 |
どちらが優れているというより、期間を10年より長く取りたいか、条件を柔軟に決めたいかで選び分けます。子どもが独立してから買い戻したい、退職金が入る15年後に買い戻したいといった長期の計画があるなら、期間制限のない再売買の予約が向いています。



契約書に「買い戻しについて協議する」としか書かれていない場合、それは権利ではなく単なる努力目標です。方式の名前まで明記されているか確認してください。
リースバックの買い戻し価格はいくら?相場と計算方法
買い戻しを検討するうえで最も気になるのが金額でしょう。ここでは相場の考え方と、実際の数字を使ったシミュレーションを紹介します。
買い戻し価格の目安は売却価格の1.1〜1.3倍
リースバックの買い戻し価格は、一般的に売却価格の1.1〜1.3倍が目安とされています。1,000万円で売却した自宅なら、買い戻すには1,100万〜1,300万円が必要という計算です。
あくまで目安であって、契約内容や物件の状況、市況によって変動します。買い戻し価格を「売却価格の◯倍」と契約書で固定する方式もあれば、買い戻し時点の時価で再評価する方式もあるため、どちらで合意するかは重要な交渉ポイントです。
なぜ売った金額より高くなるのか(上乗せの内訳)
「自分が売った値段で買い戻せないのは納得できない」と感じる方は多いはず。上乗せ分には理由があります。
- 業者が購入したときにかかった仲介手数料・登録免許税・不動産取得税などの諸費用
- 買い戻し(再売買)のときに業者側で発生する諸費用
- 保有期間中の固定資産税・都市計画税などの負担
- 業者の利益
業者は投資として物件を保有しているため、売却時と同額で手放せば赤字になってしまいます。上乗せ自体は不当なものではありません。問題になるのは、上乗せの根拠が説明されないまま相場より大幅に高い価格を提示されるケースです。
具体例でシミュレーション(1,500万円で売却した場合)
市場価格2,000万円の自宅を、リースバックで1,500万円(市場価格の75%)で売却したケースで考えてみます。
| 倍率 | 買い戻し価格 | 売却額との差額 |
|---|---|---|
| 1.1倍 | 1,650万円 | +150万円 |
| 1.2倍 | 1,800万円 | +300万円 |
| 1.3倍 | 1,950万円 | +450万円 |
1.3倍だと、買い戻し価格は当初の市場価格2,000万円に迫ります。市場価格より安く売って市場価格に近い額で買い戻すのですから、金額だけを見れば決して有利な取引ではありません。それでも住み慣れた家を守れる価値をどう評価するかが、判断の分かれ目になります。
家賃と合わせた「総支払額」で判断する
見落とされがちなのが、買い戻すまでに支払う家賃です。上の例で月額家賃を10万円とすると、5年住めば600万円、10年なら1,200万円を家賃として支払う計算になります。
| 居住期間 | 家賃総額(月10万円) | 買い戻し価格(1.2倍) | 実質負担の合計 |
|---|---|---|---|
| 5年後に買い戻し | 600万円 | 1,800万円 | 2,400万円 |
| 10年後に買い戻し | 1,200万円 | 1,800万円 | 3,000万円 |
受け取った売却代金1,500万円を差し引いても、10年住んで買い戻す場合の持ち出しは1,500万円。買い戻し価格だけでなく、家賃を含めた総支払額で判断するのが失敗しないコツです。家賃の決まり方はこちらで詳しく解説しています。


リースバックで買い戻しできなくなる5つのケース
権利を設定していても、買い戻しが実現しないことがあります。よくある5つのパターンを知っておきましょう。
最も多いパターンです。営業担当の口頭説明だけで、契約書には買い戻しの記載がない。この状態では業者に応じる義務がなく、断られても法的に争うのは困難です。
買戻特約なら最長10年、期間を定めなければ5年で権利が消滅します。再売買の予約でも契約で期限を設けるのが通常なので、いつまでに買い戻すかを把握しておかないと権利を失います。
見落とされがちですが重要な点です。買い戻しの権利は賃貸借契約を守っていることが前提で、家賃を滞納すると再売買予約権が消滅する契約条件になっているケースがあります。契約解除されれば買い戻しどころか居住そのものを失います。
所有権は業者にあるため、投資家などへの転売は法律上可能です。買戻特約の登記や再売買予約の仮登記がなければ、新しい所有者に買い戻しの権利を主張できない可能性があります。
権利も期限も問題ないのに、資金が足りず断念するケース。家賃を払いながら1,000万円超の資金を貯めるのは簡単ではありません。資金計画は契約前から立てておく必要があります。
3つ目の家賃滞納は特に注意してください。「家賃が払えなくなったから買い戻して住宅ローンに切り替えよう」という発想は、権利が消滅した後では手遅れになります。
買い戻し資金はどう用意する?住宅ローンは使える?
買い戻しの現実的な壁は資金です。どう調達するかを整理しておきましょう。
住宅ローンは組めるが審査は通常どおり
買い戻しでも住宅ローンは利用できます。ただし通常の不動産購入と同じ審査を受けるため、年収・勤務先・年齢・健康状態などの条件をクリアしなければなりません。リースバックを利用する年齢層を考えると、完済時年齢の上限が壁になることもあります。
金融機関によってはリースバックの買い戻しに住宅ローンを適用しない方針のところもあるため、買い戻しを前提にするなら早い段階で金融機関に相談しておくと安心です。
リースバック前の延滞が響くケース
住宅ローンの返済が苦しくなってリースバックを選んだ場合、それ以前に延滞や滞納があると個人信用情報に記録が残ります。この記録が消えるまでは新たな住宅ローンの審査に通りにくく、買い戻しのハードルが上がります。
リースバックの審査基準そのものは、こちらの記事をご覧ください。


親族による買い戻しという選択肢
本人の年齢や信用情報が理由でローンが難しいなら、子どもなど親族が買主となって買い戻す方法もあります。実家を子世代が取得し、親はそのまま住み続けるという形です。
再売買予約権は原則として設定した本人の権利なので、親族名義で買い戻せるかは契約次第です。将来子どもに引き継ぐ可能性があるなら、権利を譲渡できる条件になっているか契約前に確認しておきましょう。贈与税や相続税の扱いも絡むため、税理士への相談をおすすめします。
リノベーション済みの家を買い戻すときの注意点
ここからは、あまり語られていないけれど実務では頻繁に問題になるテーマです。リースバック中に家に手を入れた場合、買い戻し価格はどうなるのでしょうか。
誰がリノベ費用を負担したかで買い戻し価格が変わる
売却後の家は借りている状態なので、リフォームやリノベーションの費用を誰が出すかで扱いが分かれます。
| 費用負担者 | 買い戻し価格への影響 | 注意点 |
|---|---|---|
| 業者(オーナー) | 資産価値の向上分が上乗せされる可能性が高い | 上乗せの計算方法を契約時に確認 |
| 入居者(元所有者) | 原則として上乗せされないよう交渉すべき | 自費で価値を上げた分を再び買わされないよう明記 |
厄介なのは入居者が自費でリノベーションしたケースです。自分のお金で価値を上げた家を、その上がった価値込みの価格で買い戻すことになりかねません。入居中に入居者負担で行った工事は買い戻し価格に反映しないという取り決めを、工事の前に書面で交わしておくのが安全です。
リノベーションを前提としたリースバックの仕組みは、こちらの記事で解説しています。


建て替え・大規模リフォームは原則できない
「古い家だからリースバック中に建て替えたい」という相談をいただくことがありますが、賃借人の立場では建て替えはできません。建物は業者の所有物であり、取り壊しや増改築には所有者の承諾が必要だからです。
設備の交換程度なら承諾を得られることもありますが、間取り変更をともなう大規模リフォームは断られるのが一般的といえます。建て替えを実現したいなら、まず買い戻して所有権を取り戻すのが筋道です。
買い戻しと建て替え、どちらを選ぶべきか
築年数が古く、買い戻した後に建て替えや大規模改修を予定しているなら、買い戻し価格の妥当性はより慎重に見る必要があります。買い戻しに1,800万円、その後の建て替えに2,000万円かかるなら、合計3,800万円。同じ予算で別の中古住宅を購入してリノベーションする選択肢と比べてみる価値があります。



「この家に住み続けたい」という気持ちと、「その金額を払う価値があるか」という計算は、分けて考えると判断しやすくなりますよ。
買い戻しで後悔しないための契約前チェックリスト6項目
買い戻しを視野に入れてリースバックを契約するなら、署名前に次の6項目を確認してください。
- 買戻特約か再売買の予約か、方式が契約書に明記されているか
- 買い戻し価格の決め方(固定倍率か時価評価か)が具体的に書かれているか
- 買い戻しの期限が何年後までか明示されているか
- 登記または仮登記で権利を保全してもらえるか
- 家賃滞納など権利が消滅する条件が示されているか
- 権利を子どもなど親族に引き継げるか
すべてに答えられる業者なら、買い戻しに真剣に対応する体制があると考えていいでしょう。逆に「そのときに相談しましょう」で済ませようとする相手には、契約を急がず一度持ち帰る判断が必要です。
買い戻し条件は業者ごとに大きく違うので、複数社を比較して選ぶことをおすすめします。


空き家のみらいLABを運営する株式会社CLOUD HOMeは、宅地建物取引士の資格を持つ代表が1,500件以上の訳あり不動産の相談を解決してきました。買い戻しを含む契約条件の妥当性チェックから、リノベーションによる住まいの再生まで一貫して対応しています。すでに他社の契約書を受け取っている段階でのセカンドオピニオンもお受けしています。
リースバックの買い戻しに関するよくある質問
- 買い戻し価格は契約後に変更されることがありますか?
-
契約書で金額や計算方法を固定していれば、原則として一方的な変更はできません。一方、「買い戻し時の時価による」といった定め方をしている場合は、市況によって金額が動きます。トラブルを避けたいなら、固定倍率など計算方法を具体的に明記してもらいましょう。
- リースバックの買い戻しに期限はありますか?
-
買戻特約の場合は民法により最長10年、期間を定めなければ5年で権利が消滅し、期間の更新もできません。再売買の予約には法律上の期間制限がないため、当事者の合意で自由に設定できます。いずれにせよ契約書で期限を確認しておくことが大切です。
- 家賃を滞納すると買い戻せなくなりますか?
-
買い戻しの権利は賃貸借契約を守っていることが前提とされるのが一般的で、滞納によって権利が消滅する契約条件になっているケースがあります。賃貸借契約を解除されれば住み続けることもできなくなるため、家賃の支払いが厳しくなったら早めに業者へ相談してください。
- 買い戻すときに諸費用はいくらかかりますか?
-
通常の不動産購入と同じく、登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬・印紙税などがかかります。目安は物件価格の6〜9%程度で、住宅ローンを利用する場合は事務手数料や保証料も加わります。買い戻し価格とは別枠で準備しておきましょう。
まとめ|リースバックの買い戻しは契約書がすべて
買い戻しができるかどうかは、売却してから考えることではありません。売却する前の契約内容ですべてが決まります。口頭の「買い戻せますよ」を信じて契約し、後から権利がないと知るケースが実際に起きているからです。
- 買い戻しはオプションであり、契約時に権利を設定しなければ実現しない
- 権利には買戻特約と再売買の予約があり、実務では期間や価格を自由に決められる後者が主流
- 買い戻し価格の目安は売却価格の1.1〜1.3倍。家賃を含めた総支払額で判断する
- 期限切れ・家賃滞納・第三者への転売で権利を失うことがある
- 入居者負担のリノベ費用が買い戻し価格に上乗せされないよう、事前に書面化しておく
契約書を前に「この条件で本当に買い戻せるのか」と迷ったときは、署名する前に第三者へ相談してください。空き家のみらいLABでも、買い戻し条件の確認から住まいの活用まで無料でご相談を受け付けています。








