老後の資金を自宅で調達する方法として、リースバックとリバースモーゲージがよく比較されます。どちらも「自宅に住み続けたまま資金を得る」という点は同じですが、契約の中身はまったく別物です。
この記事では、リースバックとリバースモーゲージの違いを10項目の比較表で整理し、年齢や物件種別など5つの条件からどちらが向いているかを判断できる診断を用意しました。相続で家族に何が残るかや、リコース型のリスクまで解説します。

銀行でリバースモーゲージを勧められたのですが、リースバックとどちらがいいのか分からなくて…。



実は年齢や物件の種類によっては、そもそも片方しか選べないケースが多いんです。まず違いの本質から押さえていきましょう。
リースバックとリバースモーゲージの違いを一言でいうと
細かい条件を比べる前に、この2つが根本的に何を意味するのかを掴んでおくと理解が早くなります。
リースバックは「家を売って借りる」、リバースモーゲージは「家を担保に借金する」
リースバックは自宅を業者に売却し、その家を賃貸として借り直す不動産取引です。契約した瞬間に所有権は買主に移り、あなたの立場は「所有者」から「借主」へ変わります。
対するリバースモーゲージは、自宅を担保に入れてお金を借りる金融商品です。所有権は自分のまま。契約者が亡くなったときに自宅を売却して借入金を一括返済するのが基本の仕組みです。
つまりリースバック後は「家を借りている状態」、リバースモーゲージ後は「借金している状態」。住み続けられるという結果は同じでも、法的な立場はまるで違います。
| リースバック | リバースモーゲージ | |
|---|---|---|
| 契約の本質 | 売買+賃貸 | 融資(借入) |
| 契約後の立場 | 借主 | 所有者かつ債務者 |
| 毎月払うもの | 家賃 | 利息(商品による) |
どちらが向いているかは5つの条件で決まる
「どっちが得か」を一般論で語るのは難しく、状況によって答えが変わります。判断を左右するのは主に次の5つです。
- 年齢(60歳以上かどうか)
- 物件の種類(戸建てかマンションか)
- 住宅ローンの残債
- 資金の使い道
- 所有権を残したいかどうか
この5つを順番に確認していけば、自分に合う方法はかなり絞り込めます。具体的な診断は記事の後半で紹介します。まずは全体像を比較表で見ていきましょう。
リースバックの仕組みそのものを詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。


【比較表】リースバックとリバースモーゲージの違い10項目
両者の違いを10の項目で整理しました。自分に関係が深そうな行から見てみてください。
| 比較項目 | リースバック | リバースモーゲージ |
|---|---|---|
| ①契約形態 | 不動産の売買契約+賃貸借契約 | 不動産を担保にした融資契約 |
| ②所有権 | 買主(業者)に移転する | 自分のまま保持する |
| ③年齢制限 | 原則なし | 55〜65歳以上とする金融機関が多い |
| ④対象物件 | 戸建て・マンション・事業用など幅広い | 戸建て中心。マンションは対象外の場合が多い |
| ⑤資金の受け取り方 | 売却代金を一括で受け取る | 一括または年金形式で分割 |
| ⑥資金の使いみち | 制限なし | 老後資金やリフォームなどに限定される場合が多い |
| ⑦毎月の支払い | 家賃 | 利息のみ、または死亡時に一括返済 |
| ⑧固定資産税 | 支払い不要(所有者は業者) | 引き続き自分で納付する |
| ⑨契約の終わり方 | 賃貸借契約の期間満了または退去 | 契約者の死亡時に自宅を売却して返済 |
| ⑩相続への影響 | 不動産は残らないが売却代金が相続財産になる | 不動産は相続対象だが借入金の返済義務も引き継がれる |
表の中で特に見落とされやすいのが⑧の固定資産税です。リバースモーゲージは所有権を持ち続けるため、固定資産税や都市計画税の納付が続きます。マンションなら管理費や修繕積立金の負担も変わりません。一方のリースバックは、これらの支払いが家賃に一本化されます。
- リバースモーゲージには年齢制限があり、60歳未満は使えないことが多い
- マンションはリバースモーゲージの対象外になりやすい
- 資金の使いみちに制限がないのはリースバックだけ
⑥の資金使途も判断を分けるポイントです。リバースモーゲージは老後の生活費やリフォーム費用などに用途が限定されることが多く、事業資金には使えないのが一般的といえます。開業資金や借入金の返済にあてたいなら、用途が自由なリースバックのほうが向いているでしょう。
リバースモーゲージには公的な商品もある
民間の金融機関が扱う商品のほかに、住宅金融支援機構が提供する「リ・バース60」という制度も存在します。60歳以上を対象に、住宅の建設・購入・リフォーム、サービス付き高齢者向け住宅への入居一時金などに使途を限定した商品です。
民間の商品と違って不動産評価額の定期的な見直しがないため、地価下落による融資限度額の減額を心配せずに済むのが利点でしょう。住宅に関する使いみちに限られる点は割り切る必要がありますが、リフォーム資金を確保しながら住み続けたい方には検討の価値があります。
どの商品も金融機関ごとに条件が異なるので、リバースモーゲージを本格的に検討するなら複数の金融機関で条件を比べてみてください。
5つの条件で分かる|あなたに向いているのはどっち?
ここからは実際に絞り込んでみましょう。上から順に確認していくと、多くの方は途中で答えが出ます。
リバースモーゲージは契約者の死亡時に自宅を売却して返済する仕組みのため、申込者を55〜65歳以上に限定する金融機関がほとんどです。60歳未満の方は、そもそも土俵に上がれないケースが多いと考えてください。リースバックには原則として年齢制限がありません。
多くの金融機関はリバースモーゲージの対象を戸建てに限定しています。マンションは建物部分の評価割合が高く価値が下がりやすいため、長期の融資では担保割れのリスクが高いと判断されるからです。マンションにお住まいなら、リースバックのほうが選択肢として現実的でしょう。
リバースモーゲージは新たな借入なので、既存の住宅ローンが残っていると審査が厳しくなります。リースバックなら売却代金でローンを完済できるため、返済が苦しい状況からの立て直しに使えます。ただし売却代金が残債を下回るオーバーローンの場合は、どちらも利用が難しくなり、任意売却などの検討が必要です。
事業資金、子どもの支援、借金の返済など、まとまった額を自由に使いたい目的があるならリースバックです。リバースモーゲージは用途が限定されることが多く、希望する使い方ができない可能性があります。
ここまでの4つに当てはまらず、なおかつ「自宅は自分名義のままにしておきたい」という希望が強い方には、リバースモーゲージが向いています。生きている間は所有者であり続け、家賃も発生しません。



条件①〜④のどれかに当てはまる時点で、リバースモーゲージは選べないか使いにくい可能性が高くなります。逆にいえば、リバースモーゲージを選べる方は条件がかなり整っているということです。
リバースモーゲージを選ぶ前に知るべき3つのリスク
リバースモーゲージが「やばい」といわれる背景には、将来の不確実性に起因する3つのリスクがあります。避けられないものではありませんが、知らずに契約すれば後悔につながりかねません。
長生きリスク|借入枠を使い切ると資金が尽きる
リバースモーゲージの融資限度額は、担保となる自宅の評価額をもとに決められます。年金形式で受け取っていた場合、想定より長生きすると限度額に達して資金が止まってしまうことがあるんです。
90歳、100歳まで元気に暮らす可能性を考えると、これは決して小さな問題ではありません。借入計画は保守的に立てておく必要があります。
金利上昇リスク|多くが変動金利
リバースモーゲージの多くは変動金利を採用しています。金利が上昇すれば毎月支払う利息が増え、生活費を圧迫しかねません。契約時に固定金利を選べるか、変動でも上限金利の設定があるかを確認しておきましょう。
担保評価も定期的に見直されるため、地価が下がれば融資限度額が減額されたり、差額の返済を求められたりする可能性があります。
担保割れリスク|リコース型は相続人に返済義務が残る
最も注意したいのがこれです。契約者の死亡後に自宅を売却しても借入残高に届かなかった場合、その不足分をどう扱うかは契約の型で変わります。
| 契約の型 | 売却額が借入残高に届かない場合 |
|---|---|
| リコース型 | 不足分を法定相続人が返済する義務を負う |
| ノンリコース型 | 不足分を相続人に請求しない |
リコース型を選んでしまうと、子どもに予期せぬ借金を残すことになりかねません。家族への影響を抑えたいなら、ノンリコース型かどうかを必ず確認してください。多くの金融機関では契約時に推定相続人の同意を書面で求めますが、それは裏を返せば相続人に影響が及ぶ商品だということです。
リースバックを選ぶ前に知るべき3つの注意点
公平を期すために、リースバック側の弱点も同じ深さで見ておきましょう。
売却価格は市場価格の6〜8割になる
リースバックの買取価格は、市場で普通に売る場合の6〜8割程度が相場です。業者は賃貸として運用する前提で購入するため、その分が差し引かれます。手元に残る金額を最大化したいなら、通常の売却のほうが有利です。
家賃を払い続ける必要がある
リースバックの家賃は買取価格と利回りから算出されるため、周辺の賃貸相場より高くなる傾向があります。年金収入だけで長期間払い続けられるかどうかは、契約前に必ず試算しておきたいポイントです。
家賃の決まり方や相場の考え方は、こちらの記事で詳しく解説しています。


定期借家契約だと住み続けられない場合がある
リースバック後の賃貸借契約は定期借家契約が主流です。定期借家には更新の概念がなく、期間が満了して貸主が再契約に応じなければ退去しなければなりません。「ずっと住める」と説明されたのに退去を求められたというトラブルが実際に起きています。
長く住み続けたいなら、普通借家契約を選べる業者を優先して検討してください。リースバックのデメリット全般については、こちらでまとめています。


相続を考えるとどう違う?家族への影響を比較
どちらを選ぶかは、自分の老後だけでなく家族に何を残すかの問題でもあります。相続時に起こることを整理しておきましょう。
| 相続時の状況 | リースバック | リバースモーゲージ |
|---|---|---|
| 自宅 | 残らない(すでに売却済み) | 残るが売却して返済にあてるのが原則 |
| 相続財産 | 使い残した売却代金 | 自宅から借入残高を差し引いた分 |
| 負債 | なし | 借入金の返済義務を引き継ぐ |
| 家族の手続き | 賃貸借契約の扱いを協議 | 売却または自己資金での返済を選択 |
リースバックは自宅という資産が相続財産から消える代わりに、負債も残しません。売却代金を使い切っていれば相続財産はほぼゼロになりますが、家族が返済に追われることはないわけです。
リバースモーゲージは自宅が相続対象として残るものの、返済義務もセットで引き継がれます。相続人が自己資金で返済すれば自宅を守れますが、多くの場合は売却して精算する流れになります。リコース型で担保割れが起きていれば、家族への負担は避けられません。



子どもに実家を残したいなら、リバースモーゲージのほうがいいということでしょうか?



そう単純ではありません。返済のために結局売却するケースが多いので、実家を確実に残したいなら、そもそも資金調達の方法を根本から見直したほうがいい場合もあります。
リースバックと相続の関係については、こちらの記事で詳しく解説しています。


実は「どちらも選ばない」という選択肢もある
リースバックとリバースモーゲージを比較していると、この2択で決めなければいけない気分になりがちです。けれど視野を広げると、もっと条件のいい方法が見つかることも少なくありません。
通常売却+住み替えのほうが有利なケース
リースバックの買取価格は市場価格の6〜8割で、その後は家賃も発生します。家に強いこだわりがないのであれば、市場価格で普通に売却して、家賃の安い住まいへ移るほうが手元に残る資産は多くなります。
「この家に住み続けたい」という気持ちが、いくらの価値に相当するのか。冷静に数字で比べてみる価値はあります。
市場価格2,000万円の自宅を例に、10年間の収支を単純化して比べてみましょう。
| リースバック | 通常売却+賃貸へ住み替え | |
|---|---|---|
| 受け取る金額 | 1,400万円(市場価格の7割) | 1,880万円(諸費用差引後の目安) |
| 10年分の住居費 | 家賃月10万円で1,200万円 | 家賃月7万円で840万円 |
| 10年後の手残り | 200万円 | 1,040万円 |
あくまで単純化した試算ですが、金額面だけを見れば差は小さくありません。それでも引っ越しの負担や、地域とのつながりを失う影響を考えると、リースバックを選ぶ合理性がある方もいます。大切なのは、両方の数字を把握したうえで決めることです。
リノベーションで住まいの価値を活かす方法
築年数が古い家は、リバースモーゲージの担保評価もリースバックの買取価格も低く出がちです。ところが同じ家でも、リノベーションによって資産価値や住みやすさが変われば、選べる道は増えます。
手放さずに使い続ける、一部を賃貸に出す、リノベーション前提で売却する。空き家や訳あり不動産の分野では、こうした組み合わせで解決するケースが多くあります。金融商品としての比較だけで結論を出す前に、不動産としての可能性を検討してみてください。
空き家のみらいLABを運営する株式会社CLOUD HOMeでは、宅地建物取引士の資格を持つ代表が1,500件以上の訳あり不動産の相談を解決してきました。リースバックありきではなく、通常売却やリノベーション活用まで含めて中立的にご提案しています。どの方法が合っているか迷っている段階でもご相談いただけます。
リースバックとリバースモーゲージに関するよくある質問
- リースバックとリバースモーゲージは併用できますか?
-
同じ自宅で同時に利用することはできません。リバースモーゲージは自宅に抵当権を設定するため、その状態のままリースバックで売却することは原則として不可能です。切り替えたい場合は、借入金を完済して抵当権を抹消する必要があります。
- リバースモーゲージからリースバックに切り替えられますか?
-
自宅の売却代金で借入金を完済できる見込みがあれば、切り替えは可能です。リースバックの買取価格が借入残高を下回る場合は差額を自己資金で補う必要があるため、事前に残高と査定額の両方を確認しましょう。
- どちらのほうが手元に多くお金が残りますか?
-
一括で受け取れる金額はリースバックのほうが大きくなる傾向がありますが、その後の家賃負担があります。リバースモーゲージは月々の支出を抑えられる代わりに、受け取れる総額は担保評価額の範囲内です。居住予定年数を含めた総支出で比較してください。
- 契約に家族の同意は必要ですか?
-
リバースモーゲージでは、多くの金融機関が推定相続人の同意を書面で求めます。リースバックに法律上の同意義務はありませんが、自宅という大きな資産の売却なので、家族と事前に話し合っておくとトラブルを防げます。
まとめ|違いを理解すれば選択肢は自然に絞られる
リースバックとリバースモーゲージは、同じ「自宅で資金調達」でも中身がまったく違う仕組みです。年齢や物件の種類といった条件で、そもそも選べる方法が決まってしまうケースも多くあります。
- リースバックは「家を売って借りる」、リバースモーゲージは「家を担保に借金する」
- 60歳未満やマンション所有の場合、リバースモーゲージは使えないことが多い
- リバースモーゲージには長生き・金利上昇・担保割れの3つのリスクがある
- リコース型は相続人に返済義務が及ぶため、ノンリコース型かどうかの確認が必須
- 通常売却やリノベーション活用など、2択以外の選択肢も検討する価値がある
老後の住まいとお金の判断は、一度決めるとやり直しがききません。迷ったときは契約を急がず、複数の選択肢を比べたうえで結論を出してください。空き家のみらいLABでも、中立的な立場でのご相談を無料でお受けしています。





