「自宅を売っても、そのままずっと住み続けられます」。そんな営業トークをきっかけにリースバックを契約し、深刻なトラブルに巻き込まれる人が急増しています。国民生活センターへの相談件数は、この5年で約10倍。2026年8月にも改めて注意喚起が出されるほど、リースバックのトラブルは社会問題になりつつあります。
この記事では、実際に寄せられた相談をもとにしたトラブル事例7選と、契約前にできる回避策、2026年10月に施行される国土交通省の新ガイドラインのポイント、困ったときの相談窓口まで解説します。

親がリースバックの契約をしそうで心配…。どんなトラブルがあるのか知っておきたいです。



実際の相談事例を知っておくだけで、危ない契約はかなり見抜けるようになりますよ。公的なデータをもとに順番に見ていきましょう。
リースバックの仕組みそのものから知りたい方は、先にこちらの記事をご覧ください。


リースバックのトラブルが急増している【相談件数は5年で約10倍】
まず押さえておきたいのは、リースバックのトラブルが「一部の運が悪い人の話」ではなくなっているという事実です。公的機関のデータで確認しましょう。
国民生活センターへの相談は2019年度24件→2024年度239件
国民生活センターが2025年5月21日に公表した報道発表資料「強引に勧められる住宅のリースバック契約にご注意!」によると、全国の消費生活センター等に寄せられたリースバック関連の相談件数は次のように推移しています。
| 年度 | 相談件数 |
|---|---|
| 2019年度 | 24件 |
| 2023年度 | 221件 |
| 2024年度 | 239件 |
2019年度にはわずか24件だった相談が、2024年度には239件。5年で約10倍という異常なペースで増えているのがわかります。リースバック市場の拡大スピードに、業者の質や消費者保護のルールが追いついていないのが実情です。
相談者の約7割が70歳以上
同じ報道発表資料では、契約当事者の約7割が70歳以上と報告されています。老後資金への不安につけ込んで高齢者に強引な勧誘を仕掛ける業者が存在し、なかには認知症などで判断能力が低下した高齢者が、相場よりはるかに安い価格で自宅を売却させられた事例まで寄せられています。
つまりリースバックのトラブルは、ご本人だけでなく「離れて暮らす親が契約してしまわないか」という家族の問題でもあるんです。この記事の後半では、家族が契約してしまった場合の対処法も紹介します。
2026年8月にも最新の注意喚起が出ている
国民生活センターは2026年8月4日にも「自宅の『リースバック』トラブルにご注意!」という注意喚起を公表しました。2025年の報道発表から1年あまりで再度の注意喚起が出るのは、それだけ相談が減っていない証拠といえます。
行政側も動いており、国土交通省は2026年10月施行の新ガイドラインを策定しました(詳しくは後述します)。裏を返せば、国が本腰を入れるほどトラブルが深刻化しているのが今のリースバック業界だということです。
リースバックでよくあるトラブル事例7選
ここからは、国民生活センターや国土交通省の公表資料で報告されている代表的なトラブルを7つ紹介します。どれも実際の相談をもとにした類型なので、「自分や親に起こったらどうなるか」を想像しながら読んでみてください。
①強引な勧誘・押し買いで契約させられた
断っているのに何度も電話や訪問を繰り返す、長時間居座って契約を迫るといった、いわゆる「押し買い」型のトラブルです。「今日中に決めないと条件が悪くなる」と急かされ、内容をよく理解しないまま売買契約と賃貸借契約に署名してしまったという相談が典型例といえます。
貴金属などの訪問購入は2013年の特定商取引法改正でクーリングオフの対象になりましたが、不動産は対象外です。強引に契約させられても後から無条件で解除できないため、被害が深刻化しやすいのが特徴です。
②相場より大幅に安く買い取られた
国土交通省の「住宅のリースバックに関するガイドブック」には、相場が1億2,000万円相当の自宅を700万円で売却する契約を結んでしまった事例が紹介されています。ここまで極端でなくても、リースバックの買取価格は市場価格の6〜8割程度になるのが一般的で、その仕組みを知らずに1社の言い値で契約してしまうケースが後を絶ちません。
判断能力が低下した高齢者が、価格の妥当性を検討できないまま不利な条件で契約させられた相談も複数報告されています。
③「ずっと住める」と言われたのに退去を求められた
リースバックのトラブルで最も深刻なのがこのパターンです。営業担当から「そのままずっと住み続けられます」と説明されたのに、実際の契約は2〜3年の定期借家契約で、期間満了とともに再契約を拒否されて退去を迫られたという相談が典型です。
国土交通省の2020年度事業者調査では、リースバック後の賃貸借契約について約80%の事業者が「定期借家契約」と回答しています。定期借家契約は普通借家契約と違って更新の概念がなく、貸主が再契約に応じなければ住み続けられません。「ずっと住める」という口頭説明と契約書の中身が食い違っていないか、必ず確認が必要です。
④家賃を値上げされた
国民生活センターの報道発表資料には、売却代金1,600万円・家賃6万円という説明で契約したのに、約3年後の再契約時に家賃を約11万円に値上げされた事例が掲載されています。ほぼ倍の家賃です。年金収入だけで暮らす高齢者にとって、この値上げは事実上の退去勧告に等しいといえます。
リースバックの家賃はもともと周辺相場より高めに設定される傾向があるうえ、再契約のタイミングで値上げを提示されるリスクもあります。契約前に「何年住む予定で、家賃総額がいくらになるか」を計算しておくことが欠かせません。家賃相場の考え方はこちらの記事で詳しく解説しています。


⑤買い戻しできなかった
「いつでも買い戻せます」と言われて契約したのに、いざ買い戻そうとしたら口約束だけで契約書に条件の記載がなく、応じてもらえなかったというトラブルです。買い戻し価格が当初の売却価格より大幅に高く設定されていて、資金的に断念したケースもあります。
買い戻しを希望するなら、再売買の予約や買戻特約として、価格・期限を契約書に明記してもらうのが大前提です。
⑥修繕費の負担を突然求められた
「修繕費は買主負担」と説明を受けていたのに、契約書では売主(入居者)負担になっていて、給湯器の故障やエアコンの交換で思わぬ出費を強いられたという相談も報告されています。売却後は自分の家ではなく「借りている家」になるため、修繕の負担区分は賃貸借契約の取り決め次第です。
契約前に「給湯器が壊れたら誰が直しますか?」と具体例で確認し、口頭の回答と契約書の記載が一致しているか照らし合わせてください。
⑦物件を勝手に第三者へ売却された
売却後の所有権は買主の業者にあるため、業者がその物件を投資家など第三者へ転売すること自体は法律上可能です。「勝手に売らない」という口約束を信じていたのに転売され、新しいオーナーから再契約を拒否された、買い戻しの約束が引き継がれなかったという相談があります。
賃借人としての権利は転売後も基本的に引き継がれますが、定期借家契約の場合は期間満了後の保証がありません。口約束はトラブルのもとと心得て、大事な条件はすべて書面に残しましょう。
- 強引な勧誘・押し買いで契約させられた
- 相場より大幅に安く買い取られた
- 「ずっと住める」と言われたのに退去を求められた
- 家賃を値上げされた
- 買い戻しできなかった
- 修繕費の負担を突然求められた
- 物件を勝手に第三者へ売却された
こうした事例は、リースバックという仕組みそのものが持つ弱点と地続きです。制度上のデメリットを網羅的に知りたい方は、あわせてこちらもどうぞ。


なぜリースバックはトラブルが起きやすいのか?構造的な3つの理由
「悪い業者に当たったら運が悪い」で片づけられないのがリースバックの怖いところです。トラブルが多発する背景には、仕組みそのものに根ざした3つの理由があります。
売買と賃貸が一体になった複雑な契約だから
リースバックは「自宅の売買契約」と「その家を借りる賃貸借契約」を同時に結ぶ取引です。売却価格・家賃・契約期間・更新の可否・買い戻し条件・修繕負担と、確認すべき項目が通常の売却の倍以上あります。
国土交通省も、売買と賃貸借が不可分一体の複雑な契約形態であるがゆえに、消費者が取引内容を十分理解しないまま契約に至るケースがあると指摘しています。1つひとつの条件は理解できても、全体像を把握しきれずに落とし穴を見逃してしまうわけです。
売主にはクーリングオフが適用されないから
意外と知られていませんが、リースバックにはクーリングオフが使えません。宅地建物取引業法のクーリングオフ制度は不動産会社が「売主」となる取引を対象にしたもので、リースバックでは消費者側が売主になるため対象外なんです。
契約書に署名・押印してしまえば、原則としてあとから無条件で撤回する手段はありません。「とりあえず契約して、ダメなら解除すればいい」が通用しないのがリースバックです。だからこそ契約前の確認がすべてといっても大げさではありません。
判断能力が低下した高齢者が狙われやすいから
相談者の約7割が70歳以上という数字が示すとおり、リースバックの主な利用者は高齢者です。老後資金や借金返済の不安を抱えた高齢者は「自宅を手放さずにお金が入る」という提案を断りにくく、悪質業者にとって格好のターゲットになっています。
国民生活センターには、認知症などで判断能力が低下した高齢者が内容を理解できないまま不利な契約をさせられた事例も寄せられています。ご本人が「大丈夫」と言っていても、家族が契約内容を一緒に確認する体制づくりが大切です。
【2026年10月施行】国交省の新ガイドラインでトラブル対策はどう変わる?
トラブル急増を受けて、国土交通省は2026年7月28日に「住宅のリースバック取引における宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」、いわゆるリースバックに関するガイドラインを公表しました。施行は2026年10月1日です。消費者向けの手引きだった2022年の「ガイドブック」と違い、今回は業者側に向けて宅建業法の解釈を明確化したルールという位置づけになります。
押し買いにあたる勧誘行為が明確に禁止された
新ガイドラインでは、断った後の勧誘の継続や長時間に及ぶ勧誘など、「押し買い」に該当し得る行為が宅建業法上の禁止行為として具体的に示されました。事実を故意に告げないことの禁止や、契約事項に関する書面の交付義務についても、リースバック取引での考え方が明文化されています。
トラブル事例①のような強引な勧誘は、今後は行政処分の対象として問いやすくなるということです。
価格・家賃の算定根拠の明示が求められる
売買価格や家賃の算定根拠を明示すること、そして売却代金と契約期間内に支払う家賃の合計額との関係を消費者にわかりやすく提示することも推奨されました。「なぜこの買取価格なのか」「家賃を払い続けたら総額いくらになるのか」を業者側が説明する流れができたのは、トラブル事例②や④への直接の対策といえます。
それでも「契約前の自衛」が必要な理由
ガイドラインができたからといって、悪質業者が一夜で消えるわけではありません。法令を守らない業者は一定数残りますし、ガイドラインが定めるのはあくまで業者側の行為規範であって、契約内容そのものの有利・不利を保証してくれるものではないからです。
むしろ「算定根拠を聞いても説明できない業者は、新ガイドラインすら守れない業者」と判断できるようになったと考えましょう。次の章で紹介するチェックリストを使えば、その見極めが具体的にできます。
リースバックのトラブルを回避する契約前チェックリスト7項目
ここまで見てきたトラブルは、契約前のチェックでほとんど防げます。署名する前に、次の7項目を1つずつ確認してください。
- 賃貸借契約は普通借家契約か定期借家契約か(定期借家なら期間と再契約の条件)
- 買取価格と家賃の算定根拠を説明してもらったか
- 買い戻しの価格・期限が契約書に明記されているか
- 修繕費・設備故障の負担区分が契約書で確認できるか
- 複数社から見積もりを取って比較したか
- 家族が契約内容を一緒に確認したか
- 契約書を宅建士や弁護士など第三者にチェックしてもらったか
特に重要なのが最初の2つです。普通借家契約なら借地借家法で更新が保護されますが、定期借家契約は期間が来たら再契約できる保証がありません。長く住み続けたいなら、普通借家契約を選べる業者を優先的に検討しましょう。
算定根拠については、2026年10月以降は新ガイドラインを根拠に堂々と説明を求められます。「企業秘密なので」などとはぐらかす業者は、その時点で候補から外して問題ありません。



口頭で聞いた条件は、必ず「契約書のどこに書いてあるか」まで確認するのがコツです。書面にない約束は、ないものと同じだと考えてください。
リースバックのトラブルに遭ってしまったときの相談窓口
すでに契約してしまった、強引な勧誘を受けている。そんなときは1人で抱え込まず、公的な窓口に相談してください。相談先は状況によって使い分けます。
まずは消費者ホットライン188(消費生活センター)
局番なしの「188(いやや)」に電話すると、最寄りの消費生活センターにつながります。相談は無料で、契約内容の問題点の整理から業者との交渉の助言までカバーしてくれる心強い窓口です。国民生活センターに寄せられたリースバック相談の多くも、この窓口経由です。
強引な勧誘の段階なら、はっきり断ったうえで「消費生活センターに相談します」と伝えるだけでも抑止力になります。悪質な場合は、業者に宅建業免許を出している行政庁(国土交通省または都道府県)への通報も有効です。
契約済みでも取り消せる可能性があるケース
クーリングオフは使えなくても、契約の経緯によっては取り消しや無効を主張できる場合があります。代表的なのは次のようなケースです。
- 「ずっと住める」などうその説明で契約した(消費者契約法の不実告知による取消)
- 脅されたり、帰ってほしいと伝えても居座られたりして契約した(民法の強迫、消費者契約法の退去妨害による取消)
- 認知症などで判断能力がない状態で契約した(意思能力を欠く契約として無効を主張できる可能性)
どれに当てはまるかの判断は専門知識が必要なので、消費生活センターか弁護士に早めに相談しましょう。収入などの条件を満たせば、法テラスの無料法律相談も利用できます。時間が経つほど証拠集めも取り消しの主張も難しくなるため、スピードが命です。
高齢の親が契約してしまった場合の対処法
離れて暮らす親がいつの間にか契約していた、というケースでは、まず契約書一式(売買契約書・重要事項説明書・賃貸借契約書)を確保し、契約時の状況を本人から聞き取ってください。そのうえで消費生活センターに家族として相談できます。
親の判断能力に不安がある場合は、成年後見制度の利用も選択肢に入ります。後見人が就けば、本人に不利な契約の取り消しを含めた法的な対応を進めやすくなるのがメリットです。今後の再発防止という意味でも、地域包括支援センターに見守りの相談をしておくと安心です。
誠実なリースバック会社を見分ける3つのポイント
トラブルを避ける最大の防御策は、そもそも誠実な会社を選ぶこと。見分けるポイントは3つあります。
1つ目は、デメリットやリスクを先に説明してくれるかどうか。良いことしか言わない営業は、それだけで警戒に値します。2つ目は、価格と家賃の算定根拠を数字で示せるかどうか。3つ目は、契約を急がせず、家族の同席や第三者への相談を歓迎するかどうかです。
複数社を比較する際の具体的な視点は、こちらの記事にまとめています。審査に不安がある方は審査基準の記事もあわせてどうぞ。


空き家のみらいLABを運営する株式会社CLOUD HOMeでは、宅地建物取引士の資格を持つ代表が1,500件以上の訳あり不動産の相談を解決してきました。リースバックについても、契約条件やリスクを隠さず説明したうえで、リノベーションを組み合わせた住まいの再生までワンストップで対応しています。「この契約、大丈夫かな」という段階のセカンドオピニオンとしてもご相談いただけます。
リースバックのトラブルに関するよくある質問
- リースバックはクーリングオフできますか?
-
できません。宅地建物取引業法のクーリングオフ制度は不動産会社が売主となる取引を対象としており、消費者が売主となるリースバックには適用されません。ただし、うその説明を受けて契約した場合などは、消費者契約法や民法にもとづいて取り消せる可能性があります。
- 契約してしまった後でも解約できますか?
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契約の経緯によっては可能です。不実告知があった場合の消費者契約法にもとづく取消や、強迫を理由とする民法上の取消、判断能力がない状態で結んだ契約の無効主張が認められるケースがあります。1人で判断せず、早めに消費者ホットライン188や弁護士に相談してください。
- リースバックのトラブルは無料で相談できますか?
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消費者ホットライン188に電話すると、最寄りの消費生活センターに無料で相談できます。収入などの条件を満たせば、法テラスの無料法律相談を利用する方法もあります。
- 悪質な業者かどうか契約前に調べる方法はありますか?
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宅建業免許を出している行政庁(国土交通省や都道府県)で、業者の行政処分歴の確認が可能です。あわせて複数社から見積もりを取り、価格や家賃の算定根拠を説明できない業者、契約を急がせる業者は避けましょう。
まとめ|リースバックのトラブルは「契約前」にしか防げない
リースバックのトラブル相談は5年で約10倍に増え、その約7割は70歳以上の高齢者に関わるものです。クーリングオフが使えない以上、勝負は契約書に署名する前に決まります。
- リースバックの相談件数は2019年度24件から2024年度239件へ約10倍に急増している
- 退去要求・家賃値上げ・買い戻し不可など、トラブルの多くは契約書の確認不足から起こる
- 売主にクーリングオフは適用されないため、契約前のチェックリスト確認が唯一の防御策になる
- 2026年10月施行の国交省ガイドラインで、押し買いの禁止と算定根拠の明示が明確化された
- 困ったときは消費者ホットライン188へ。契約後でも取り消せる可能性はある
不安な契約書を前に迷っているなら、署名する前に第三者の目を通してください。空き家のみらいLABでも、リースバックの契約条件の妥当性から住まいの活用方法まで無料で相談を受け付けています。










