「リースバックって戸建て向けのサービスでは?うちは分譲マンションだけど使えるの?」。そんな疑問を持つ方は少なくありません。結論からいうと、マンションでもリースバックは利用できます。
ただし、マンションのリースバックには戸建てと違う論点がいくつもあります。代表的なのが管理費・修繕積立金の扱いです。「売却後は誰が払うのか」「家賃にどう影響するのか」を知らずに契約すると、想定より高い家賃に驚くことになりかねません。

管理費と修繕積立金で毎月3万円払っています。リースバックしたらこれはなくなるんでしょうか?



名義上の支払いはなくなります。ただ、実はその分が家賃に織り込まれるんです。この仕組みを理解しているかどうかで、業者との交渉力が変わってきますよ。
この記事では、マンションのリースバックと戸建ての違い、買取相場、管理費・修繕積立金と家賃の関係、管理組合との付き合い方まで、マンション特有の論点をまとめて解説します。リースバックの基本的な仕組みから知りたい方は、先にこちらをどうぞ。


リースバックはマンションでも利用できる
マンションはリースバックの対象になります。むしろ都市部では、マンションの取り扱い件数が戸建てと肩を並べるほど一般的です。
戸建てとマンションの利用件数はほぼ同数
業界のアンケート調査では、リースバックの利用件数は戸建てとマンションでほぼ同数という結果が出ています。「戸建て向けのサービス」というイメージは実態と違うんです。
理由はシンプルで、業者から見るとマンションは扱いやすい資産だからです。駅近の区分マンションは賃貸需要も再販需要も読みやすく、価格が落ちにくい。都心部のマンションなら、戸建てより高い査定が付くことすらあります。
ちなみに、よく比較されるリバースモーゲージは事情が逆です。土地の担保価値を重視する商品設計のため、区分マンションは対象外とする金融機関が多くなっています。マンションで「住み続けながら資金を得る」を実現したいなら、選択肢は実質リースバックに絞られるケースが多いということです。
マンションを扱わない業者もある
注意したいのは、すべての業者がマンションに対応しているわけではない点です。戸建て専門の業者、対応エリアを限定している業者、一定の築年数以内しか扱わない業者など、方針はさまざま。1社に断られたからといって「うちのマンションはリースバックできない」と結論づけるのは早すぎます。
マンションの取り扱い実績が豊富な業者を複数あたって、査定額と賃料条件を比較するのが基本の動き方です。業者選びの比較ポイントはこちらの記事にまとめています。


対象になりにくいマンションの条件
一方で、リースバックの審査に通りにくいマンションがあるのも事実です。代表的な条件を挙げておきます。
- 住宅ローンの残債が買取価格を上回っている(オーバーローン)
- 旧耐震基準(1981年5月以前の建築確認)で、再販時の融資が付きにくい
- 借地権付きマンションで、権利関係が複雑
- 修繕積立金の滞納が多く、管理状態に不安があるマンション
特に多いのがオーバーローンのケースです。売却代金でローンを完済できないと抵当権を外せないため、原則としてリースバックは成立しません。ただし残債の状況によっては打つ手が残されています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。


マンションのリースバックと戸建ての違い【比較表】
基本の仕組みは同じでも、マンションと戸建てでは条件面にいくつかの違いが出ます。まず全体像を表で押さえましょう。
| 項目 | マンション | 戸建て |
|---|---|---|
| 買取価格の傾向 | 市場価格の70〜80%。都心・駅近は80〜90%も | 市場価格の70〜80%。立地の影響が大きい |
| 査定で重視される点 | エリア・駅距離・階数・管理状態 | 土地の価値・接道・建物の状態 |
| 家賃の決まり方 | 買取価格×利回り÷12+管理費等の織り込み | 買取価格×利回り÷12 |
| 維持費の負担 | 管理費・修繕積立金は業者負担(家賃に反映) | 修繕費は業者負担(契約による) |
| リフォームの制約 | 業者の承諾+管理規約の両方が条件 | 業者の承諾のみ |
| 価格変動リスク | 市況の影響を受けやすく買い戻し価格が動きやすい | 建物価値の下落で比較的読みやすい |
買取価格の決まり方
リースバックの買取価格は、マンションでも戸建てでも市場価格の70〜80%程度が目安です。ただしマンションの場合、賃貸需要や再販需要が高い都心部・駅近の物件なら市場価格の80〜90%前後まで伸びるケースがあります。業者が「貸しやすく売りやすい」と判断できる物件ほど、買取率は上がるわけです。
家賃の決まり方
家賃は周辺の賃貸相場ではなく、買取価格に業者の期待利回りを掛けて算出されます。計算式は「買取価格×期待利回り÷12か月」。この基本式は物件種別を問わず共通ですが、マンションでは管理費・修繕積立金という固定コストが上乗せ要素として加わります。ここが本記事の核心なので、次の章でじっくり解説します。
買い戻し時の価格変動リスク
将来の買い戻しを考えているなら、マンションは市況の影響を受けやすい点も頭に入れておきたいところです。都心マンションの価格が上昇局面にあると、時価連動型の契約では買い戻し価格が売却時の想定を大きく超えることがあります。買い戻し価格を固定倍率で契約書に明記できるか、業者に確認しておきましょう。
管理費・修繕積立金は誰が払う?家賃との関係を計算例で解説
マンションのリースバックで最も質問が多いのが、管理費と修繕積立金の扱いです。答えは「所有者であるリースバック業者が払う」。ただし、それで話が終わらないのがこのテーマの本質です。
名義上は業者負担、実質は家賃に織り込まれる
管理費・修繕積立金は区分所有者に請求されるお金です。リースバックで所有権が業者に移れば、請求先も業者に変わります。固定資産税も同様で、あなたの毎月の支払いは家賃に一本化されるわけです。
ここで終わればめでたしめでたしなのですが、業者も慈善事業ではありません。管理費や修繕積立金を払い続ける以上、そのコストを見込んだうえで家賃を設定します。つまり支払いの窓口が変わるだけで、負担そのものは家賃の中に生き続けているのです。
計算例|同じ買取価格でも維持費で家賃が変わる
買取価格2,000万円、業者の期待利回り8%のマンションで計算してみます。管理費・修繕積立金が月2万円のケースと月4万円のケース、その差は一目瞭然です。
| 項目 | 維持費が月2万円 | 維持費が月4万円 |
|---|---|---|
| 基本家賃(2,000万円×8%÷12) | 約13.3万円 | 約13.3万円 |
| 管理費・修繕積立金の織り込み分 | 2万円 | 4万円 |
| 想定される月額家賃 | 約15.3万円 | 約17.3万円 |
| 年間の差額 | 24万円 | |
同じ買取価格でも、維持費の差がそのまま家賃の差になります。年間24万円、10年住めば240万円。管理費・修繕積立金が高いマンションほどリースバック後の家賃は高くなるという構造は、査定書を受け取る前に知っておきたい事実です。
なお、織り込み方は業者によって異なります。全額を上乗せする業者もあれば、利回りの中で吸収する業者もあるため、提示された家賃の内訳を確認することが交渉の第一歩。家賃の決まり方と引き下げ交渉のコツは、こちらの記事で詳しく解説しています。


大規模修繕の一時金・値上げは誰が負担するか
近年、修繕積立金の値上げや大規模修繕にともなう一時金の徴収が増えています。リースバック後にこうした負担増が起きた場合、支払い義務を負うのは所有者である業者です。賃借人のあなたに一時金の請求が直接来ることはありません。
ただし油断は禁物です。普通借家契約でも、経済事情の変動を理由とした賃料改定の協議はあり得ますし、定期借家契約なら再契約のタイミングで値上げされた家賃を提示される可能性があります。修繕積立金の値上げ計画が進んでいるマンションなら、その分が将来の家賃改定に跳ね返るリスクまで見込んでおくと安心です。



長期修繕計画と修繕積立金の値上げ予定は、査定前に管理組合の総会資料で確認できます。業者も同じ資料を見て査定するので、先に把握しておくと話がスムーズですよ。
マンションリースバックの買取相場と査定で見られるポイント
買取相場の目安は市場価格の70〜80%とお伝えしましたが、実際の査定額は物件ごとの条件で上下します。マンション査定で業者が見ているポイントを整理しておきましょう。
査定額を左右する基本要素
- エリアと最寄り駅からの距離(賃貸需要・再販需要の読みやすさ)
- 築年数と耐震基準(新耐震かどうかで融資の付きやすさが変わる)
- 階数・方角・専有面積などの個別条件
- 管理状態(清掃・修繕履歴・管理組合の運営)
不動産の流動性が高いエリア、つまり売買が活発な場所にあるマンションほど買取価格は高くなる傾向があります。逆に郊外や地方では、市場価格そのものは高くても業者の再販リスクが読みにくく、買取率が抑えられがちです。
築古でも不利にならないケースがある
「築30年超だから安く買い叩かれるのでは」と心配する方は多いのですが、リースバックでは必ずしもそうなりません。築古物件は今後の価値下落リスクが小さいと評価されることがあり、業者の運用方針によってはむしろ扱いやすい資産だからです。
どの要素を重視するかは業者ごとに違います。同じマンションでも査定額に数百万円の差が付くことは珍しくないため、築年数を理由にあきらめる前に複数社の査定を取るのが鉄則です。
査定額が下がるマンション特有の要素
マンションならではの減点要素もあります。修繕積立金の積み立て不足や滞納世帯の多さ、管理会社に委託せず自主管理しているケースなどは、業者から「将来の維持コストが読めない」と見られて査定に響きます。エレベーターなし・共用部の老朽化・長期修繕計画の未整備も同様です。
専有部分はきれいでも、マンション全体の管理状態で評価が下がるのが区分所有の宿命です。査定前に管理組合の資料をそろえ、修繕履歴や積立状況を説明できるようにしておくと、不当に低い査定を防ぎやすくなります。
リースバック後、管理組合との関係はどう変わる?
競合の解説記事ではほとんど触れられませんが、マンションのリースバックでは管理組合との関係も変わります。住み心地に直結する部分なので押さえておきましょう。
区分所有者が業者に変わる(議決権・総会)
管理組合の組合員は区分所有者です。リースバックで所有権が業者に移ると、組合員の地位も総会の議決権も業者側に移ります。長年理事を務めてきた方でも、売却後は組合員ではなくなり、総会での議決に加われません。
管理費の値上げや大規模修繕の実施といったマンションの意思決定に、住んでいる自分の声を直接反映できなくなる。これはマンションのリースバック特有のデメリットです。マンションの運営に関わり続けたい方は、この点を許容できるか考えてから決断してください。
管理規約は引き続き守る必要がある
所有者でなくなっても、マンションに住む以上は管理規約や使用細則に従う義務が残ります。区分所有法では、賃借人などの占有者も建物の使用方法について規約と同じ義務を負うとされているからです。ペット飼育のルール、楽器演奏の時間制限、バルコニーの使用方法などは、リースバック後もこれまでどおり適用されます。
所有者変更の手続きと近隣への見え方
所有権が移転すると、業者から管理組合(管理会社)へ区分所有者の変更届が提出されます。手続き自体は業者側が進めるため、あなたがやることはほぼありません。
気になるのは「売却したことがご近所に知られないか」でしょう。引っ越しがなく表札もそのままなので、日常生活で気づかれることはまずありません。ただし登記簿は誰でも取得できるうえ、管理組合の名簿上は所有者が変わるため、理事会関係者には伝わる可能性があります。完全に秘密にできるわけではない点は理解しておきましょう。
- 変わる|組合員の地位・総会の議決権・管理費等の支払い義務(業者へ移転)
- 変わらない|管理規約・使用細則を守る義務、共用施設の利用ルール
- 手続き|所有者変更届は業者側が対応。あなたの引っ越し・表札変更は不要
マンションリースバックのトラブル事例と注意点
便利な仕組みである一方、リースバックをめぐる相談は年々増えています。国民生活センターに寄せられた事例には、マンションが舞台になったものが少なくありません。
国民生活センターに寄せられたマンションの事例
公表されている事例のひとつに、80代男性が自宅マンションのリースバックを持ちかけられたケースがあります。「1,200万円で売却してそのまま住める」という勧誘を長時間にわたって受け、断りきれずに契約。後から親族に「売却価格が安すぎる」と指摘されて解約を申し出たところ、手付金の返還を拒まれたうえ違約金まで請求されたという内容です。
高齢者がひとりで判断してしまい、家族が気づいたときには契約済みだった。この流れが典型的なパターンです。相場を知らないまま契約すると、市場価格を大きく下回る金額で大切なマンションを手放すことになりかねません。



親が業者から勧誘を受けているみたいなんです。家族として何をチェックすればいいですか?



まず売却価格が周辺相場の何%かを確認してください。そして契約の種類が普通借家か定期借家か。この2点だけでも、危険な契約はかなり見分けられます。
定期借家契約と再契約拒否のリスク
リースバックの賃貸借契約には、更新できる普通借家契約と、期間満了で終了する定期借家契約があります。定期借家の場合、再契約は貸主の判断次第。「ずっと住み続けられると思っていたのに、2年で退去を求められた」というトラブルの多くは、この契約形態の理解不足から起きています。
長く住み続けたいなら、普通借家契約を選べる業者を優先するか、定期借家でも再契約の条件を書面で確認しておくことが欠かせません。
家賃が周辺の賃貸相場より高くなるケース
すでに見たとおり、リースバックの家賃は買取価格×利回りで決まり、マンションでは管理費・修繕積立金も織り込まれます。その結果、同じマンション内の賃貸募集より月数万円高い家賃になることも珍しくありません。長期で住むほど割高感は積み上がるため、周辺の賃貸相場と比べたうえで、住み続ける価値があるかを冷静に判断しましょう。
トラブルの類型と対処法は、こちらの記事で網羅的に解説しています。契約前に一読しておくと防げる失敗がほとんどです。


マンションでリースバック+リノベーションという選択肢
築年数が経ったマンションの場合、「資金は必要だけど、古くなった住まいもなんとかしたい」という悩みも出てきますよね。ここで検討したいのが、リノベーションを組み合わせたリースバックです。
賃借人になると専有部のリフォームにも承諾が要る
リースバック後のあなたは賃借人なので、専有部分であっても勝手にリフォームはできません。所有者である業者の承諾が必要で、マンションでは管理規約の工事ルール(床材の遮音等級や工事申請など)もクリアする必要があります。戸建てより一段ハードルが高いのが実情です。
リノベーション付きリースバックなら承諾問題を回避できる
リノベーション付きリースバックは、売却と同時に買主側の負担・主導で住戸をリノベーションし、生まれ変わった部屋に住み続ける仕組みです。所有者となる会社自身が工事を行うため、承諾をめぐる問題がそもそも発生しません。管理組合への工事申請も所有者として進められます。仕組みの詳細はこちらをご覧ください。


空き家のみらいLABを運営する株式会社CLOUD HOMeは、宅地建物取引士の資格を持つ代表が1,500件以上の訳あり不動産の相談を解決してきました。買取からリノベーションの設計・施工、入居後のアフターメンテナンスまで一貫対応できるのが強みです。マンションのリースバックで「この査定額は妥当か」「家賃の内訳に管理費がどう入っているか」といったセカンドオピニオンのご相談も無料で受け付けています。
マンションのリースバックに関するよくある質問
- 住宅ローンが残っているマンションでもリースバックできますか?
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売却代金でローンを完済できれば問題ありません。残債が買取価格を上回るオーバーローンの状態では原則利用できませんが、貯蓄で差額を埋める、金融機関の合意を得て任意売却型で進めるなどの方法が残されている場合があります。残債額と査定額を並べて確認するところから始めてください。
- リースバック後、管理費や修繕積立金の値上げがあったら家賃も上がりますか?
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値上げ分を直接請求されることはありません。支払い義務を負うのは所有者である業者です。ただし定期借家契約の再契約時や賃料改定の協議で、コスト増を理由に家賃の引き上げを提示される可能性はあります。契約時に賃料改定の条件を確認しておきましょう。
- マンションのリースバックの家賃はいくらになりますか?
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目安は「買取価格×期待利回り(8%前後)÷12か月」に、管理費・修繕積立金相当額を加えた金額です。買取価格2,000万円・維持費月3万円なら月16万円前後が想定ラインになります。利回りや織り込み方は業者ごとに違うため、複数社の提示を比べるのが確実です。
- リースバックしたマンションを将来買い戻すことはできますか?
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契約時に買い戻しの権利(再売買の予約など)を設定しておけば可能です。目安は売却価格の1.1〜1.3倍ですが、マンションは市況で価格が動きやすいため、固定価格で契約書に明記できるかが重要なポイントになります。口頭の約束だけでは権利になりません。
- 高齢の親のマンションについて、子どもが代わりに相談できますか?
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可能ですし、むしろ推奨されます。国民生活センターへの相談では、高齢者がひとりで契約して家族が後から気づく事例が少なくありません。契約者本人の意思確認は必要ですが、査定や条件の比較段階からご家族が同席することで、不利な契約を防ぎやすくなります。
まとめ|マンションのリースバックは維持費と家賃の関係がカギ
マンションでもリースバックは問題なく利用できます。むしろ都心部では戸建てより高い買取率が期待できることもあり、リバースモーゲージが使いにくいマンション所有者にとって現実的な選択肢です。
- マンションのリースバック利用件数は戸建てとほぼ同数。ただし対応しない業者もある
- 買取相場は市場価格の70〜80%。都心・駅近なら80〜90%も狙える
- 管理費・修繕積立金は業者負担になるが、実質的には家賃に織り込まれる
- 維持費が月2万円違えば家賃も月2万円前後変わる。査定時に内訳を確認する
- 売却後は管理組合の議決権を失う一方、管理規約を守る義務は残る
- 契約形態(普通借家か定期借家か)と売却価格の妥当性がトラブル回避の要点
マンションのリースバックで損をしないコツは、家賃の内訳と契約条件を理解したうえで複数社を比較することに尽きます。査定書を見て迷ったら、契約前の段階でお気軽にご相談ください。









