親が高齢になり、「このままでは実家が空き家になる」と考え始めた方は多いのではないでしょうか。調べていくうちにリースバックという方法を知り、実家にも使えるのか気になっている。この記事は、そんな方に向けて書いています。
先に結論をお伝えすると、親の実家をリースバックできるかは「その家に誰が住むか」で決まります。リースバックは、家を売った人(またはその家族)が借りて住み続ける仕組みです。親がまだ住んでいる実家なら使えますが、すでに誰も住んでいない空き家は、原則として対象になりません。
この記事では、実家の状況別にリースバックが使えるかと代わりの選択肢、実家をリースバックするメリットと注意点、相続税の特例を失う落とし穴、親子間でリースバックする場合のリスク、親が元気なうちに進める手順までまとめました。監修は、訳あり不動産を中心に1,500件以上の相談を解決してきた宅地建物取引士の桐生辰宏です。

母が一人で実家に住んでいます。施設に入ったら空き家になるので、今のうちにリースバックしておけば安心でしょうか。



お母様がこれからも住み続けるなら有効です。ただ、数年以内に施設へ移る予定なら、リースバックより別の方法が合うこともあります。順番に整理しましょう。
親の実家はリースバックできる?結論は「誰が住むか」で決まる
リースバックは「売却」と「賃貸」を組み合わせた取引です。業者は家を買い取ったあと、元の持ち主に貸して家賃を受け取ります。この「借りて住む人」がいることが、リースバックが成り立つ前提です。
空き家になった実家は原則として対象外
誰も住んでいない家をリースバックしても、借りて家賃を払う人がいません。業者から見れば、ただの空き家の買取です。実際、業者の多くは「売主またはその家族が居住すること」を条件にしています。「空き家をリースバックで活用」という言葉を見かけることがありますが、正確には「空き家になる前に、住んでいるうちにリースバックする」という意味だと理解してください。
実家のリースバックが使える3つの条件
- 売却後も誰かが住む。親本人が住み続けるか、子どもが戻って住む
- 名義人(親)に判断能力がある。売主は名義人本人で、子どもが代わりに契約することはできない
- 住宅ローンなどの残債を売却代金で完済できる。抵当権が外せないと売却が成立しない
リースバックの仕組みそのものは、以下のピラー記事で整理しています。


実家の状況別|リースバックが使えるか・代わりの選択肢
親の実家の状況は、大きく3つのパターンに分かれます。自分の家族がどれに近いかを確認してください。
| パターン | リースバック | 売主 | 借主 | 代わりの選択肢 |
|---|---|---|---|---|
| ①親が住み続ける | 使える | 親 | 親 | リバースモーゲージ |
| ②子が実家に戻って住む | 条件付きで使える | 親 | 子(または親子) | 親子間売買、相続後に子が住む |
| ③親が施設に入り空き家になる | 使えない | - | - | 売却・買取、賃貸、空き家管理 |
パターン①親が住み続ける|最も典型的な使い方
親が名義人で、売却後も親が借主として住み続ける形です。親は住み慣れた家を離れずに老後資金を得られ、子どもにとっては「親が亡くなった後に空き家が残る」問題が先に片付きます。親の年金で家賃を払えるかが最大の確認ポイントで、年金と家賃のバランスの考え方は以下の記事で詳しく解説しています。


パターン②子が実家に戻って住む|条件付きで使える
親の介護のために子どもが実家に戻る、親と同居する、といったケースです。売主は名義人の親、借主は子ども(または親子で連名)という形になります。業者によっては売主本人以外が借主になる契約を受けないこともあるため、査定の段階で「借主は子どもになる」と伝えて確認してください。借主の子どもには家賃を払える収入が求められます。
パターン③親が施設に入り空き家になる|リースバックは使えない
親が施設に入居し、実家に誰も住まなくなる場合は、リースバックではなく通常の売却や買取、賃貸に出す、管理を続けるといった方法を選ぶことになります。「施設に入る前にリースバックしておけば」と考える方もいますが、入居後は借主として家賃だけを払い続けることになり、施設費用との二重負担です。空き家になる実家の処分方法は、以下の記事で7つに分けて比較しています。


親の実家をリースバックする3つのメリット
パターン①②に当てはまる場合、実家のリースバックには親と子の両方にとってのメリットがあります。
メリット①将来の空き家化・特定空家化を防げる
親が亡くなった後、誰も住まない実家を相続すると、固定資産税・管理・草木の手入れ・近隣への配慮といった負担が子どもにのしかかります。管理が行き届かず自治体から「特定空家」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が大きく上がるケースも出てくるでしょう。リースバックで親の生前に所有者を業者へ移しておけば、子どもが空き家を抱える事態そのものがなくなります。
メリット②親の老後資金・介護費を確保できる
売却代金は親の財産として、生活費の補填や介護サービス、将来の施設入居の費用に充てられます。「実家はあるけれど現金がない」という親世代は珍しくありません。住み続けながら資産を現金に変えられるのは、リースバックならではの特徴です。
メリット③相続で分けやすい現金に変わる
兄弟姉妹が複数いる場合、実家という1つの不動産をどう分けるかで相続がもめがちです。売却代金として現金になっていれば、法定相続分や遺言に沿って分けやすくなります。相続対策としての使い方と、その落とし穴は以下の記事で詳しく解説しています。


実家のリースバックで注意すべき4つのこと
メリットの裏には、親の実家ならではの注意点があります。とくに③の税金の話は、見落とされがちなポイントです。
注意①売主は親本人。子どもは代わりに契約できない
実家の名義が親なら、売買契約を結ぶのは親本人です。子どもが委任状を持って手続きを代行することはあっても、売るかどうかを決めるのは親であり、親が内容を理解して同意していることが前提になります。「親のために子どもが決めて進める」という形は取れません。
注意②認知症・成年後見になると家庭裁判所の許可が必要
親の判断能力が落ちてからでは、本人の署名があっても売買契約が無効になるおそれがあり、業者も契約を受けられません。成年後見人を立てれば手続きは進められますが、本人が住んでいる家を売るには家庭裁判所の許可が必要です。後見人の選任から許可まで数か月かかり、許可されない場合もあります。実家のリースバックは、親が元気なうちにしか選べない方法だと考えてください。
注意③相続税の特例・空き家の3,000万円控除が使えなくなる
実家を不動産のまま相続すれば使える税の優遇が、生前にリースバックで現金化すると使えなくなる点には注意が必要です。
| 税の優遇 | 内容 | リースバック後 |
|---|---|---|
| 小規模宅地等の特例 | 親が住んでいた土地を同居の子などが相続すると、330㎡まで相続税評価額が80%減る | 土地が業者のものになるため使えない。現金は満額で評価される |
| 相続空き家の3,000万円控除 | 1981年5月31日以前に建てられた親の家を相続して売ると、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる(2027年12月31日までの売却が対象) | 相続する前に親が売っているため使えない |
| マイホームの3,000万円控除 | 親が自宅を売るときに、譲渡所得から3,000万円を控除できる | 親が売主として使える |
相続税がかかる規模の財産がある家庭では、小規模宅地等の特例を失うことで相続税が数百万円単位で増えることもあります。一方、親が売るときにはマイホームの3,000万円控除が使えるため、譲渡所得税はゼロで済むことが多い。どちらが得かは家庭ごとに違うので、契約前に税理士に試算してもらってください。売却時の税金は以下の記事で解説しています。


注意④兄弟姉妹への共有と、売却代金の使い道
親の財産をどうするかは親が決めることで、法的には兄弟姉妹の同意は要りません。ただ、実家の売却を一部の子どもだけで進めると、「勝手に売った」「売却代金を使い込んだのでは」と後の相続でもめる原因になります。売ること自体と、売却代金を何に使うか(生活費・介護費・相続で分ける分)を、兄弟姉妹全員で共有しておいてください。



相談の現場でいちばん多いのは、実家を売ったこと自体より、売却代金の使い道を巡る兄弟間のもめごとです。通帳を分けて管理するなど、お金の流れを見える形にしておくと防げます。
親子間でリースバックする場合(子が買って親に貸す)
「業者に売るくらいなら、子どもが買い取って親に住んでもらえばいい」と考える方もいます。親子間のリースバックです。家が家族の手に残るのは大きな魅力ですが、業者に売る場合にはない税金と資金のハードルがあります。
| 項目 | 業者へのリースバック | 親子間リースバック |
|---|---|---|
| 家の行き先 | 業者が所有。将来転売される | 子どもが所有。家族に残る |
| 親の3,000万円控除 | 使える | 使えない(親子間の売買は対象外) |
| 売買価格 | 市場価格の6〜8割 | 時価に近い価格が必要。安すぎると差額が贈与とみなされる |
| 子どもの資金 | 不要 | 購入資金が必要。親族間売買は住宅ローンを扱う金融機関が限られる |
| 家賃 | 業者の利回りで決まる | 親子で決められるが、相場から離れすぎると贈与の問題が出る |
| 住み続けられる期間 | 契約の種類次第 | 家族の合意次第 |
とくに注意したいのは価格です。親子だからと相場よりかなり安く売ると、時価との差額を親から子への贈与とみなされ、子どもに贈与税がかかる可能性があります。住宅ローンも親族間売買を扱う金融機関は限られるため、子どもに十分な自己資金がないと成立しにくいのが実情です。親子間で検討する場合は、税理士と司法書士に事前に相談してください。
実家のリースバックの進め方|親が元気なうちにやる5ステップ
親本人と兄弟姉妹で、実家を今後どうするかを話し合います。親は住み続けたいのか、数年後に施設や子の家に移るのか。この答えで、リースバックが合うかどうかが決まります。
リースバック業者2〜3社に加え、仲介会社にも査定を依頼して市場価格を把握します。リースバックの買取価格が市場価格の何割かが分かると、条件の良し悪しを判断しやすくなるはずです。築古の実家でも査定が付く条件は、戸建ての記事で解説しています。
親が長く住む前提なら、借主が希望する限り更新できる普通借家契約を選んでください。家賃が親の年金で払える範囲に収まるかも、この段階で確認してください。
契約は親本人が結びます。子どもが同席して一緒に説明を聞くと、親の理解を助けられるうえ、後で兄弟に経緯を説明するときの証人にもなるでしょう。
売却代金は親の口座に入ります。家賃の支払い用、生活費用、将来の介護用などに口座を分け、兄弟姉妹が使い道を確認できる形にしておくと、後のもめごとを防げるはずです。
契約の種類ごとに何年住めるかの違いは、以下の記事で詳しく解説しています。


築年数の古い実家で査定が付くか不安な方は、こちらもどうぞ。


リースバックが使えない実家の選択肢
親がすでに施設に入った、親が亡くなって実家を相続した、という場合はリースバックの出番ではありません。状況に合わせて次の方法を検討してください。
| 状況 | 主な選択肢 | ポイント |
|---|---|---|
| 親が施設に入り空き家に | 売却・買取、賃貸、空き家管理サービス | 親が名義人なので売却は親本人の判断が必要 |
| 親が亡くなり相続した | 相続登記のうえ売却・買取、賃貸 | 一定の条件を満たせば相続空き家の3,000万円控除が使える |
| すぐに決められない | 空き家管理サービスで維持 | 特定空家に指定されないよう定期的な管理が必要 |
相続した実家の手続きと期限は、以下の記事で順番に解説しています。


すぐに売るか決められない場合の管理方法は、こちらで比較しました。


東京で空き家になった実家を売る場合の買取業者の選び方と相場は、以下の記事にまとめています。


親の実家のリースバックに関するよくある質問
- 親に物忘れが出始めていますが、リースバックはできますか?
-
契約の内容を理解して判断できる状態であれば可能です。ただ、判断能力に疑いがあると、後から契約が無効と主張されるおそれがあるため、業者が契約を控えることもあります。医師の診断を受けておく、家族が同席して説明を受けるなど、本人の意思を確認できる形を整えてから進めてください。
- 兄弟姉妹の同意がないと実家のリースバックはできませんか?
-
名義が親だけなら、法的には親本人の意思で売却でき、兄弟姉妹の同意は要りません。ただし、一部の子どもだけで進めると、相続のときに売却代金の使い道を巡ってもめる原因になります。契約前に兄弟姉妹全員へ方針と売却代金の管理方法を共有しておくのがおすすめです。
- 親が亡くなった後、子どもが実家に住み続けることはできますか?
-
賃借権は相続の対象になるため、相続人である子どもが契約を引き継いで住むことはできます。ただし家賃を払い続ける必要があり、定期借家契約なら期間満了で終了します。子どもが長く住む予定があるなら、普通借家契約にしておくか、買戻し特約を付けておくことを検討してください。
- 実家が遠方にあっても手続きできますか?
-
できます。査定の現地調査や契約の場には親本人の立ち会いが必要ですが、子どもが遠方に住んでいても、オンラインでの説明や郵送での書類のやりとりに対応する業者は多くあります。業者が実家のエリアに対応しているかを最初に確認してください。
- 築40年以上の古い実家でも査定は付きますか?
-
築年数だけで断られることはなく、多くの場合は土地の価値を中心に査定が付きます。ただし旧耐震基準の建物や再建築不可の土地は、対応する業者が限られるのが実情です。建物を活かしてリノベーションする前提で査定する業者なら、条件が変わることもあります。
まとめ|実家のリースバックは「親が住んでいるうち」「親が元気なうち」に
親の実家をリースバックできるのは、売却後も親や子どもが住み続ける場合に限られます。空き家になってからでは使えず、親の判断能力が落ちてからでは手続きそのものが難しくなります。実家の将来が気になり始めたら、親が元気で住んでいるうちに家族で方針を話し合い、リースバックと通常売却の両方を比べてください。相続税の特例を失う点や、親子間での売買の税務リスクもあわせて確認が必要です。
- リースバックは売った人や家族が住み続ける仕組み。空き家になった実家は原則として対象外
- 親が住み続けるなら典型的な使い方。子が戻って住む場合は業者に借主の扱いを確認する
- 売主は親本人。認知症が進むと家庭裁判所の許可が必要になり、実質的に選べなくなる
- 生前に現金化すると小規模宅地等の特例や相続空き家の3,000万円控除が使えなくなる
- 親子間リースバックは3,000万円控除が使えず、安く売ると贈与とみなされる
株式会社CLOUD HOMeでは、宅地建物取引士が1,500件以上の訳あり不動産の相談を扱ってきた経験をもとに、親の実家についてリースバック・通常買取・空き家になった後の活用まで、状況に合わせた選択肢をご提案しています。親御さんとご一緒のご相談も、ご家族だけの事前相談も歓迎です。










