住み替えにリースバックは得か?仲介の売り先行と比べた費用と3つの判断条件

今の家を売って新しい家に住み替えたい。でも先に売ると仮住まいが必要になり、先に買うと二重ローンになる。住み替えを考えた方の多くが、この順番の問題で手が止まります。そこで候補に挙がるのが、売ったあとも同じ家に住み続けられるリースバックです。

先に結論をお伝えすると、住み替えにリースバックを使えば、仮住まいも二重ローンもなく、新居の引渡しに合わせて1回の引越しで移れます。ただし、仲介の売り先行と比べると、売却価格が下がるぶん手残りは少なくなるのが普通です。リースバックが得かどうかは、その差額を払ってでも手に入れたいものがあるかで決まります。

この記事では、住み替え方法5つの比較、3,000万円の家で仲介の売り先行とリースバックを比べた費用シミュレーション、リースバックが割に合う3つの条件、住み替え前提で売却価格が上がる仕組み、新居購入から逆算するスケジュール、税金と契約の注意点まで整理しました。監修は、訳あり不動産を中心に1,500件以上の相談を解決してきた宅地建物取引士の桐生辰宏です。

子どもの小学校入学に合わせて住み替えたいんです。仮住まいで2回引っ越すのは避けたいのですが、リースバックってどうなんでしょう。

引越しを1回で済ませられるのは大きな利点です。ただ、費用だけで見ると仲介より不利になることが多いので、まずは数字を並べて比べてみましょう。

目次

住み替えにリースバックを使うとは?仕組みと向いている人

住み替えでのリースバックは、今の家をリースバック業者に売って資金を確保し、新居に引っ越すまでの数か月だけ借主として住み続ける使い方です。新居の準備が整ったら退去し、契約は終わります。将来買い戻す必要はないので、買戻しの特約も付けません。

売り先行の弱点を埋める使い方

今の家を先に売る「売り先行」は、売却額が確定してから新居を選べるので資金計画を立てやすい方法です。弱点は、売った家を引き渡してから新居に入るまでの間、仮住まいが必要になること。リースバックはこの空白期間を「売った家にそのまま住む」ことで埋め、仮住まいと2回目の引越しをなくします。

住み替えのリースバックが向いている人

  • 引越しの時期を動かせない。子どもの入学や転校、転勤の時期に合わせて1回で移りたい
  • 新居の頭金や審査のために先に資金がほしい。今の家のローンを完済し、売却代金を頭金に回したい
  • 仮住まいを見つけにくい。高齢の家族やペットがいる、家族が多いなどで短期の賃貸が借りにくい

リースバックの仕組みそのものは、以下のピラー記事で整理しています。

住み替え方法5つの比較|リースバックはどこが違う?

住み替えの方法はリースバックだけではありません。代表的な5つを、費用・期間・リスクで並べました。

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方法売却価格引越し回数主な費用・リスク向いている人
売り先行+仮住まい市場価格2回仮住まいの家賃と初期費用、引越し2回分手残りを最大にしたい
買い先行市場価格1回売れるまで二重ローン。売れないと値下げを迫られる資金に余裕がある
買取保証付きの仲介期限内は市場価格、売れなければ買取価格1〜2回期限後の買取価格は市場価格の7〜8割程度新居の購入期限が決まっている
仲介+引渡し猶予の特約市場価格1回猶予は1〜2週間程度が一般的。長い猶予は買主に嫌われる新居の引渡し日と売却の決済日を近づけられる
リースバック市場価格の7〜8割程度1回売却価格の差、退去までの家賃引越し時期が固定、仮住まいが難しい

「引渡し猶予」で足りるなら仲介が有利

普通の売却でも、決済後に数日から2週間ほど住み続けられる「引渡し猶予」を特約で付けることがあります。新居の引渡し日と売却の決済日をこの範囲に収められるなら、市場価格で売れる仲介の方が有利です。リースバックが活きるのは、住み続けたい期間が1か月を超える場合や、新居の完成時期が読めない場合です。

費用シミュレーション|仲介の売り先行とリースバックを比べる

市場価格3,000万円・住宅ローンなしの家から、4か月後に完成する新居へ住み替える場合で比べます。仮住まいの家賃は月15万円、引越しは1回25万円としました。

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項目仲介の売り先行+仮住まいリースバック仲介+引渡し猶予(参考)
売却価格3,000万円2,400万円(市場価格の8割)3,000万円
仲介手数料−105.6万円0円−105.6万円
4か月分の住居費−60万円(仮住まいの家賃)−80万円(リースバックの家賃)0円
仮住まい・賃貸の初期費用−60万円−10万円(保証料など)0円
引越し−50万円(2回)−25万円(1回)−25万円(1回)
手残り約2,724万円約2,285万円約2,869万円

リースバックの家賃は売却価格に利回り(ここでは年10%)を掛けて決まるため、月20万円と仮住まいより高くなります。それでも仮住まいの初期費用と2回目の引越しがなくなるぶん、費用の合計はリースバックの方が安く済みます。ところが、売却価格の差600万円がそれを大きく上回るため、手残りは仲介の売り先行の方が約440万円多いという結果です。

引渡し猶予で新居の日程と合わせられるなら、手残りはさらに約145万円増えます。費用だけで見れば、リースバックは住み替えの方法として割高だと言わざるを得ません。リースバックの費用と手残りの計算方法は、以下の記事で詳しく解説しています。

それでもリースバックが割に合う3つの条件

約440万円の差を払っても、リースバックを選ぶ価値がある場面はあります。次の3つのどれかに当てはまるかを考えてみてください。

住み替えでリースバックが割に合う3つの条件
  • 仲介では売れるまでに時間がかかる、または売れない。再建築不可や築古などで買い手が付きにくく、売れるのを待つと住み替えの時期を逃す
  • 先に資金を確保しないと新居を買えない。今の家のローンを完済し、売却代金を頭金にしないと新居の住宅ローン審査に通らない
  • 仮住まいが現実的でない。高齢の家族の介護、ペット、子どもの通学などで、短期の賃貸と2回の引越しが大きな負担になる

とくに1つ目は、仲介との比較の前提そのものが変わるケースです。3,000万円で売れる見込みが立たない家なら、比べるべきは「リースバック」と「いつ売れるか分からない仲介」になります。

住み替え前提のリースバックで売却価格が上がる理由

シミュレーションでは売却価格を市場価格の8割としました。一般的なリースバックの相場は6〜8割ですが、住み替えが前提の場合は上限寄りの価格を引き出しやすくなります。

退去時期が決まっていると業者の出口が近い

リースバック業者は、借主が退去したあとに家を転売して利益を確定させます。長く住む前提の契約では、その転売がいつになるか分からず、市況の変化というリスクを抱えます。住み替え前提で「4か月後に退去する」と決まっていれば、業者は近い将来の転売を見込んで価格を組めるため、買取価格を上げやすいのです。売却価格の決まり方については、以下の記事で解説しています。

買戻し特約は付けずに価格を優先する

新居に移る前提なら、将来買い戻す必要はありません。買戻し特約は業者にとって転売の自由を縛る条件なので、付けないことを伝えれば、その分を価格に反映してもらえる余地があります。買戻しの仕組みについては、以下の記事を参照してください。

新居購入から逆算する住み替えのスケジュール

住み替えのリースバックでは、新居の引渡し日を起点に逆算して予定を組みます。リースバックの決済を新居の決済より先に置くのがポイントで、売却代金を新居の頭金や諸費用に回せます。

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時期の目安今の家(リースバック)新居
新居の引渡し4〜5か月前複数社に査定を依頼し、退去予定日を伝える物件探し、住宅ローンの事前審査
3か月前条件を比較して業者を決める購入の申込
2〜3か月前売買契約・賃貸借契約、決済。売却代金を受け取る売買契約、手付金の支払い
1〜2か月前借主として住み続ける住宅ローンの本審査・契約
引渡し日引越しの準備決済・引渡し
引渡し後1〜2週間引越し・退去の立ち会い入居

新居の引渡しと退去日の間に1〜2週間の余裕を持たせておくと、引越しの日程を落ち着いて組めます。リースバックの申込から決済までの日数や必要書類は、手続きの流れとあわせて確認しておくと安心です。

新居の住宅ローン審査で有利になる点

新居のローン審査の時点で今の家のローンが完済されていれば、金融機関から見た返済負担は新居のローンだけになります。売却代金を頭金に入れれば借入額も減り、審査に通りやすくなります。買い先行で二重ローンを組む場合と比べて、審査面の不安が小さいのはリースバックの利点です。

今の家にローンが残っている場合は、リースバックの決済日に売却代金で完済します。売却価格が残債に届かない場合の対処は、以下の記事で解説しています。

住み替えリースバックの税金|3,000万円控除と新居の住宅ローン控除

住み替えでいちばん見落とされやすいのが、税金の特例どうしの関係です。旧居の売却で使う特例と、新居で使う住宅ローン控除は、同時に使えない期間があります。

3,000万円控除を使うと新居の住宅ローン控除が使えない

新居に入居した年とその前2年・後3年の間に、旧居の売却で3,000万円の特別控除などの特例を使うと、新居で住宅ローン控除を受けられません。住み替えでは旧居の売却と新居の入居がほぼ同時期になるため、まずこの制限にかかります。

どちらを使うかは譲渡所得の大きさで決める

リースバックは売却価格が市場価格より低いため、旧居の売却で出る利益(譲渡所得)が小さい、あるいは損失になることも多くあります。利益が小さければ3,000万円控除を使わなくても税金は少なく済むので、新居の住宅ローン控除を優先した方が得になる場合があります。反対に、売却益が大きいなら3,000万円控除で税金をなくす方が有利です。

どちらが得かは、旧居の取得費と売却価格、新居のローン額によって変わります。住み替えの計画を立てる段階で、税理士に両方の場合の税額を試算してもらってください。リースバックの税金と3,000万円控除の要件は、以下の記事で詳しく解説しています。

住み替えのリースバックで契約前に確認する4つのこと

住み替え前提のリースバックは、数か月の短い賃貸借になるため、長く住む場合とは確認すべき点が変わります。

①退去日を自分で決められるか

住み替えでは、期間を短く区切った定期借家契約を結ぶことが多くなります。定期借家は原則として期間中に借主から解約できないため、新居の引渡しが早まると、空いた家の家賃を払い続けることになりかねません。「借主から1か月前の予告で解約できる」といった中途解約の特約を入れてもらってください。

②新居の引渡しが遅れたときに延長できるか

新築や建築中の物件は、工事の都合で引渡しが遅れることがあります。定期借家は期間満了で確定的に終わるため、延長には業者の同意による再契約が必要です。遅れた場合に再契約に応じるか、その場合の家賃はどうなるかを、契約書に書いておいてもらうと安心です。契約の種類による違いは以下の記事で解説しています。

③退去時の原状回復をどこまで求められるか

数か月しか借りていなくても、退去時にハウスクリーニング費用などを請求されることがあります。もともと自分の家だったからこそ、壁や床の傷が「借りてからの損耗」か「売る前からの状態」かで揉めやすいので、売却時の状態を写真で残しておくと安心です。原状回復と修繕の負担区分は、以下の記事で整理しています。

④家賃の日割りと支払い方法

入居月と退去月の家賃が日割りになるか、月単位で請求されるかで、数万円の差が出ます。短期の利用では、この差が全体の費用に占める割合が大きくなるので、契約前に確認してください。家賃がどう決まるかは、以下の記事で解説しています。

住み替えのリースバックに関するよくある質問

リースバックで売ったあと、新居が見つからなかったらどうなりますか?

賃貸借契約の期間内であれば、借主として住み続けられます。ただし住み替え前提の短い定期借家契約では、期間が満了すると退去しなければなりません。新居が決まる前に売る場合は、期間を長めに取る、再契約の条件を契約書に書いてもらうなど、見つからなかったときの住まいを確保してから契約してください。

住宅ローンが残っていても住み替えにリースバックを使えますか?

売却代金で残りのローンを完済できれば使えます。決済日に売却代金で一括返済し、抵当権を抹消する流れです。売却価格が残債に届かない場合は、差額を自己資金で補う必要があり、新居の頭金に回せるお金も減ります。まずは残債と査定額を並べて、手元にいくら残るかを確認してください。

住み替えまでの数か月、家賃はいくらになりますか?

家賃は売却価格に年6〜13%程度の利回りを掛け、12か月で割って決まるのが一般的です。売却価格2,400万円、利回り10%なら月20万円で、周辺の賃貸相場より高くなることが多くあります。住む期間が短いほど総額は小さくなるので、退去日を早めに確定させることが費用を抑える近道です。

転勤で数年だけ家を離れる場合にも使えますか?

リースバックは売った家に住み続ける仕組みなので、転勤で家を空ける場合には向きません。数年後に戻る予定なら、家を売らずに賃貸に出す方法や、転勤期間だけ貸す定期借家での賃貸が候補になります。戻る予定がなく転勤先で家を買うなら、通常の売却と比べて判断してください。

高齢の親が施設に入るまでの住み替えに使えますか?

使えます。施設の入居時期が決まるまで今の家に住み、入居一時金を売却代金から用意する使い方です。入居日が読みにくい場合は、中途解約の特約と再契約の条件を必ず確認してください。親が売主になるため、本人の意思確認ができるうちに手続きを進めることも大切です。

まとめ|住み替えのリースバックは「差額で何を買うか」で判断する

住み替えにリースバックを使えば、仮住まいも二重ローンもなく、1回の引越しで新居に移れます。その代わり、3,000万円の家の試算では仲介の売り先行より手残りが約440万円少なくなりました。この差額を払ってでも、引越しの時期や先に確保する資金、仮住まいを避けることに価値があるかどうかが判断の分かれ目です。

この記事のまとめ
  • リースバックは売り先行の弱点である仮住まいと2回の引越しをなくす使い方
  • 費用だけなら仲介の売り先行が有利。引渡し猶予で日程が合うなら、まず仲介を検討する
  • 仲介で売れにくい、先に資金が必要、仮住まいが難しいときはリースバックが割に合う
  • 退去時期が決まっていて買戻し特約が不要なぶん、売却価格の交渉余地がある
  • 3,000万円控除と新居の住宅ローン控除は併用できない。中途解約と延長の条件も契約前に確認する

株式会社CLOUD HOMeでは、宅地建物取引士が1,500件以上の訳あり不動産の相談を扱ってきた経験をもとに、リースバックと仲介の両方で手残りを試算し、住み替えに合う方法をご提案しています。新居の引渡し日が決まっている方も、まだ物件を探している段階の方も、お気軽にご相談ください。



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