「親から底地を相続したけれど、これって何なの?」「地代収入があるのに、なぜ売れないと言われるの?」。底地という言葉に初めて触れた方は、戸惑うことが多いのではないでしょうか。
底地とは、借地権が設定されている土地を、地主(貸す側)から見た呼び方です。土地の所有権は自分にあるのに、その上に他人の建物が建っていて自由に使えない。この「制約のある所有権」が底地の本質なんですね。
地代という収入がある一方で、利回りは低く、売却しようにも買い手が限られる。相続税の負担だけは重くのしかかる。こうした構造を理解しないまま保有し続けると、次の世代に問題を先送りすることになりかねません。
この記事では、底地の仕組みから借地権との違い、地代の相場、価格の決まり方、売却・整理の方法まで、地主が知っておくべき知識を図解を交えて解説します。

底地は「持っているけれど使えない土地」。この性質を押さえると、なぜ扱いが難しいのかが見えてきますよ。
底地とは?借地権が設定された土地のこと
まずは底地の基本構造から確認しましょう。ひとつの土地に2つの権利が重なっている、という点がポイントです。
土地の所有権はあるが自由に使えない
底地は、あくまで自分の所有する土地です。登記簿上も地主の名義になっています。ところが、その土地には借地権が設定されていて、借地人の建物が建っている。だから地主であっても、勝手に売ったり使ったりできないんです。
借地借家法によって借地人の権利は手厚く保護されており、契約期間が満了しても正当な事由がなければ更新を拒めません。つまり実質的に半永久的に土地が返ってこない状態になりがち、というのが底地の実態です。
底地と借地権の関係を図解で理解
ひとつの土地に、2つの権利が重なっているイメージで捉えると分かりやすくなります。
| 立場 | 持っている権利 | できること |
|---|---|---|
| 地主 | 底地(所有権) | 地代を受け取る・底地を売る |
| 借地人 | 借地権 | 建物を建てる・住む・借地権を売る |
更地としての価値を100とすると、借地権と底地でこれを分け合っている構造です。住宅地なら借地権が60〜70、底地が30〜40という配分が一般的。土地の価値の大部分は、実は借地人側にあるということですね。
借地人側から見た権利の内容や、旧法・新法といった契約の種類は借地権とは?種類・期間・費用の基礎を図解でわかりやすく解説で解説しています。相手がどんな権利を持っているかを正確に知っておくと、交渉の見通しが立てやすくなります。
「借地権」「貸宅地」との違い
混同されやすい言葉を整理しておきましょう。
- 底地……借地権が設定された土地を、地主側から見た呼び方(不動産取引で使われる表現)
- 借地権……同じ土地を借地人側から見た権利
- 貸宅地……底地とほぼ同じ意味。相続税評価の場面で使われる用語
底地と貸宅地は実質的に同じものを指しています。税理士から「貸宅地」と言われたら底地のこと、と理解して差し支えありません。
底地から得られる収入|地代の相場
底地を保有する唯一のメリットが、地代収入です。ただ、その金額は思ったほど大きくないのが実情です。
地代は固定資産税の3〜5倍が目安
住宅用地の地代相場は、固定資産税・都市計画税の3〜5倍程度とされています。土地の固定資産税は地主が負担するため、その分を回収したうえで多少の利益が乗る、という考え方ですね。
たとえば年間の固定資産税が15万円なら、地代は年45万〜75万円程度が目安。月額にすると3.7万〜6.2万円ほどになります。
実質利回りは1〜2%程度と低い
地代収入から固定資産税を差し引くと、手元に残るのはごくわずかです。土地の価格に対する実質的な利回りは、1〜2%程度にとどまるのが一般的といわれています。
更地価格3,000万円の土地で年間地代60万円、固定資産税15万円なら、手残りは45万円。利回りは1.5%です。これに管理の手間や交渉の負担が加わることを考えると、投資として見た場合の効率は決して良くありません。相続税の負担を考えれば、実質的にマイナスになるケースもあります。
更新料・承諾料などの一時金
地代以外にも、節目で一時金が入ることがあります。
| 一時金の種類 | 発生する場面 | 目安 |
|---|---|---|
| 更新料 | 契約更新時 | 借地権価格の3〜10% |
| 建替承諾料 | 借地人が建物を建て替える時 | 更地価格の3〜5% |
| 譲渡承諾料 | 借地権が売却される時 | 借地権価格の10% |
ただし、これらは数十年に一度の収入です。安定的な収益とは言えず、そもそも法的な支払い義務がないため、借地人と交渉になることもあります。
いまの地代が適正水準かどうかは、複数の計算方式で検証できます。値上げ交渉を考えている方も、まず根拠の作り方から確認してみてください。


底地の価格はどう決まる?
底地を売ろうと考えたとき、いくらになるのか。ここには「評価額」と「実勢価格」の大きなギャップがあります。
相続税評価額は更地価格×(1−借地権割合)
相続税の計算では、底地(貸宅地)の評価額は次の式で求めます。
底地の評価額 = 更地価格 ×(1 − 借地権割合)
更地価格3,000万円で借地権割合が70%なら、底地の評価額は3,000万円×30%=900万円という計算になります。借地権割合は国税庁の路線価図で確認できます。
実勢価格は評価額よりさらに低くなる
ここが底地の厄介なところです。相続税評価額は900万円でも、実際に第三者へ売ろうとすると、その半分以下になることも珍しくありません。
理由はシンプルで、買い手がほとんどいないから。土地を買っても自分では使えず、得られるのは利回り1〜2%の地代だけ。しかも借地人との交渉というリスクを抱え込むことになります。これでは買い手が付かないのも当然ですよね。
「相続税は評価額ベースで課税されるのに、売ってもその金額にならない」。この評価額と実勢価格のギャップが、底地を持つ地主を悩ませる最大の要因になっています。
売却先ごとに価格がどれだけ変わるのか、実際の買取相場は次の記事で詳しく解説しています。


売却先によって価格が大きく変わる
底地の価格は「誰に売るか」で劇的に変わります。これは他の不動産にはない特徴です。
| 売却先 | 価格の傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| 借地人 | 高い | 完全な所有権になるため価値が跳ね上がる |
| 第三者(同時売却) | 高い | 更地として売れるため買い手が付く |
| 専門買取業者 | 低め | 交渉リスクを見込んで査定される |
| 一般の第三者 | 最も低い | 使えない土地なので買い手がほぼいない |
底地を高く売る鍵は、借地人を巻き込めるかどうかにあります。この点は後の章で詳しく見ていきましょう。
底地を持ち続けるデメリット
底地は「持っているだけで地代が入る」と思われがちですが、実際には負担のほうが大きいケースが少なくありません。主なデメリットを確認しておきましょう。
収益性が低いのに相続税は重い
もっとも深刻なのがこの問題です。実質利回りは1〜2%と低いのに、相続税は評価額(更地価格の30〜40%)に対して課税されます。
都心の底地であれば評価額が数千万円になることもあり、相続税の納税資金を用意できない事態も起こります。売ってもその金額にならないのに、税金だけは評価額で計算される。この矛盾が、底地を「負動産」にしてしまう構造です。
売りたくても買い手が見つからない
手放したくても、一般市場ではほぼ売れません。自分で使えない、利回りも低い、借地人との交渉リスクがある。この3点が揃った土地を積極的に買う人はいないからです。
不動産会社に相談しても「うちでは扱えません」と断られることがあります。底地を専門に扱う業者でなければ、対応が難しいのが実情なんですね。
借地人とのトラブルリスク
地代の値上げ交渉、建替えの承諾、更新料の請求。底地を持つ限り、借地人とのやり取りは避けられません。世代が代わると関係性が変わり、話がこじれることもあります。
地代の滞納が続いても、契約解除のハードルは高いのが現実です。「信頼関係が破壊された」と認められる程度でなければ、解除は認められにくいとされています。
次の世代に問題を先送りすることになる
底地を保有し続けると、いずれ子や孫が同じ悩みを抱えることになります。しかも相続のたびに権利者が増えれば、意思決定はさらに難しくなります。



「自分の代では動かない」という判断が、次の世代の選択肢を狭めることもあります。元気なうちに方向性を決めておくのが、いちばんの相続対策です。
兄弟姉妹で底地を共有相続すると、売却にも地代の変更にも全員の同意が必要になり、身動きが取れなくなります。解消の道筋は共有名義の不動産を相続したら?手続き5ステップと共有解消の出口で解説しました。すでに共有になっている場合は、次の相続が発生する前に整理しておくことをおすすめします。
底地を整理する4つの方法
底地の問題を解決するには、いくつかの道があります。それぞれの特徴を押さえておきましょう。
①借地人に買い取ってもらう
もっともシンプルで、価格も高くなりやすいのがこの方法です。借地人にとっては、底地を買えば完全な所有権になり、建替えも売却も自由になるという大きなメリットがあります。
借地人に資金の余裕があれば、成立しやすい選択肢です。まずは打診してみるところから始めましょう。
②借地権を買い取って完全所有権にする
①の逆パターンです。地主が借地権を買い取れば、土地を自由に使えるようになります。更地にして売却する、賃貸物件を建てるなど、活用の幅が一気に広がります。
ただし借地権価格は更地価格の6〜7割と高額なため、まとまった資金が必要です。借地人が手放す意向を持っているかどうかも前提になります。
③等価交換で権利を分ける
土地を分割して、一部を完全な所有権として地主が取得し、残りを借地人の所有にする方法です。お互いに資金を用意せずに権利関係を整理できるのが利点。
敷地に一定の広さがあり、分割しても使える形状であることが条件になります。分割の割合は借地権割合を基準に決めるのが一般的です。
④借地権と同時売却する
借地人と協力して、底地と借地権をセットで第三者に売る方法です。買い手にとっては制約のない完全な所有権になるため、バラバラに売る合計額より高い価格がつきやすいのが最大のメリットです。
売却代金は借地権割合に応じて分けるのが一般的。双方にとってメリットが大きいため、借地人との関係が良好なら提案する価値は十分にあります。
4つの方法それぞれの進め方、借地人への切り出し方、必要な費用は次の記事で詳しく解説しています。


②や④を検討する際は、借地権側の価格がいくらになるかを把握しておく必要があります。借地権の売却相場は更地価格の何割?計算方法と高く売るコツで計算方法を確認しておくと、借地人との金額交渉で認識のズレが生じにくくなります。
底地の売却先と価格の目安
整理の方法が見えたら、次は「誰に、いくらで売れるのか」です。売却先ごとの相場感を整理しておきましょう。
借地人への売却が最も高値になりやすい
借地人にとって底地は、買えば土地が完全に自分のものになるという特別な価値があります。第三者にとっては「使えない土地」でも、借地人にとっては「自由を手に入れるための投資」なんですね。
そのため、相続税評価額に近い水準、場合によってはそれ以上の価格で買い取ってもらえることもあります。まず借地人に打診するのが定石といえます。
第三者への売却は評価額の半分以下も
一方、借地人以外の第三者に売る場合は、価格が大きく下がります。使えない土地を利回り1〜2%で持つことになるため、投資対象としての魅力が乏しいからです。
相続税評価額の半分以下、更地価格でいえば10〜15%程度になることも珍しくありません。「評価額どおりに売れる」と考えていると、査定額を見て驚くことになります。
専門買取業者という選択肢
「借地人が買ってくれない」「同時売却の話がまとまらない」という場合は、底地を専門に扱う買取業者への売却が現実的です。
専門業者は借地人との交渉ノウハウを持っており、買い取った後に借地権をまとめて完全所有権化するといった出口を描けます。価格は下がりますが、確実に現金化でき、借地人とのやり取りからも解放されます。
権利関係が複雑な物件を扱う業者のタイプと選び方は、次の記事で比較しました。


底地の相続と税金
底地の問題がもっとも表面化するのが、相続のタイミングです。ここでの判断が、その後を大きく左右します。
相続税評価額と実勢価格のギャップに注意
繰り返しになりますが、これが最大の落とし穴です。相続税は「更地価格×(1−借地権割合)」で計算された評価額に対して課税されます。ところが売却すると、その半分以下になることも。
底地を売って納税資金にしようとしても足りない、というケースが実際に起こります。相続が発生する前に、実勢価格がいくらになるのかを把握しておくことが大切です。
小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)
底地にも「小規模宅地等の特例」が使える場合があります。貸付事業用宅地等として、200㎡までの部分について評価額を50%減額できる制度です。
相続税の負担を大きく減らせる可能性があるので、適用できるかどうかを税理士に確認しておきましょう。適用には相続税の申告が条件になる点にも注意が必要です。
生前に整理しておくのが理想
底地の問題は、先送りするほど解決が難しくなります。相続で権利者が増えれば意思決定に時間がかかり、借地人との関係も希薄になっていくからです。
地主本人が元気なうちであれば、借地人との交渉もスムーズに進みます。底地を売却して現金化しておけば、相続財産を分けやすくなり、納税資金の心配もなくなります。「自分の代で片をつける」という判断が、結果的に家族を守ることにつながります。
すでに相続が発生している場合は、期限のある手続きから着手する必要があります。相続放棄の3ヶ月、相続税の10ヶ月、登記の3年という全体像は空き家を相続したらやるべき手続き完全ガイドで確認してください。底地の整理と並行して進めておくと、判断の時間を確保できます。
底地に関するよくある質問(FAQ)
最後に、底地についてよく寄せられる疑問にお答えします。
- 底地と借地権は何が違いますか?
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同じ土地を見る立場が違うだけです。借地権が設定された土地を地主側から見たものが底地、借地人側から見た権利が借地権です。更地価格を100とすると、住宅地では借地権が60〜70、底地が30〜40という配分が一般的で、土地の価値の大部分は借地人側にあります。
- 底地の地代相場はいくらですか?
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住宅用地では固定資産税・都市計画税の3〜5倍程度が目安です。年間の固定資産税が15万円なら、地代は年45万〜75万円ほど。ただし固定資産税を差し引いた実質利回りは1〜2%程度と低く、投資効率は決して良くありません。
- 底地はいくらで売れますか?
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売却先によって大きく変わります。借地人に売る場合は相続税評価額に近い水準、場合によってはそれ以上になることもあります。一方、第三者に売る場合は評価額の半分以下、更地価格の10〜15%程度になることも珍しくありません。使えない土地で利回りも低いため、買い手が限られるからです。
- 借地人が地代を払ってくれない場合はどうすればいいですか?
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まずは書面で支払いを督促し、記録を残しましょう。滞納が続いても契約解除のハードルは高く、「信頼関係が破壊された」と認められる程度でなければ解除は認められにくいとされています。長期の滞納や交渉が難航する場合は、弁護士など専門家に相談するのが確実です。
- 底地に小規模宅地等の特例は使えますか?
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使える場合があります。貸付事業用宅地等として、200㎡までの部分について評価額を50%減額できます。相続税の負担を大きく減らせる可能性があるため、適用できるかどうかを税理士に確認しましょう。特例の適用には相続税の申告が条件になります。
まとめ|底地は早めの整理が家族を守る
底地の仕組みから地代相場、価格の決まり方、整理の方法まで見てきました。要点を振り返っておきましょう。
- 底地は借地権が設定された土地を地主側から見た呼び方。所有権はあるが自由に使えない
- 地代は固定資産税の3〜5倍が目安だが、実質利回りは1〜2%と低い
- 相続税評価額は更地価格×(1−借地権割合)。実勢価格はさらに低くなる
- 整理の方法は「借地人へ売却・借地権の買取・等価交換・同時売却」の4つ
- もっとも高値がつくのは借地人への売却。第三者への売却は評価額の半分以下も
- 相続で権利者が増える前に、生前に整理しておくのが理想
底地は「収益は少ないのに税負担は重い」という、扱いの難しい資産です。持ち続けるほど選択肢は狭まり、次の世代に問題を引き継ぐことになります。
大切なのは、実勢価格を把握したうえで、借地人との関係が良好なうちに整理の方向性を決めること。この記事で全体像をつかんだら、整理方法・買取相場・地代の適正額など、気になるテーマを深掘りしてみてください。あなたの状況に合った出口が見つかるはずです。





