「親から借地権付きの実家を相続することになったけれど、何から手をつければいいの?」「地主さんに承諾をもらう必要はある?」。借地権の相続は、通常の不動産相続とは勝手が違うため、戸惑う方が多いテーマです。
結論からお伝えすると、借地権の相続に地主の承諾は必要ありません。相続は法律上当然に権利が引き継がれるため、承諾料や名義書換料を求められても、支払う法的な義務はないんです。
この記事では、借地権を相続したときの手続きの流れ、地主への通知の仕方、相続税評価額の計算方法、そして相続後にどうするかの選択肢まで、順を追って解説します。トラブルを避けながら進めるためのポイントもあわせて押さえていきましょう。

「承諾は不要、でも連絡はしておく」。この距離感が、借地権相続をスムーズに進めるコツです。
借地権の種類や地主との権利関係から確認したい方は借地権とは?種類・期間・費用の基礎を図解でわかりやすく解説を先にご覧ください。旧法か新法か、あるいは定期借地権かによって、相続後の選択肢が変わってきます。
借地権は相続できる?地主の承諾は不要
まず押さえておきたいのが、借地権と相続の基本的な関係です。ここを誤解していると、不要な出費をしてしまうことがあります。
借地権は財産として相続の対象になる
借地権は、法律上は「財産権」として扱われます。つまり、預貯金や不動産と同じように相続の対象になるということ。借地上の建物とセットで、相続人に引き継がれます。
相続によって、被相続人が持っていた借地権の内容がそのまま承継されます。契約期間も、更新の条件も、地代の額も、基本的には変わりません。
相続に地主の承諾・承諾料は必要ない
ここが最重要ポイントです。借地権を第三者に「売却」する場合は地主の承諾が必要ですが、「相続」は承諾なしで権利が移転します。
売却は当事者の意思による「譲渡」ですが、相続は法律上当然に発生する権利の承継。性質がまったく違うんですね。そのため、承諾料や名義書換料を請求されても、支払う法的義務はありません。
地主から「名義が変わるので承諾料を」と言われるケースは実際にあります。ただ、相続の場合は法的な支払い義務がないため、丁寧にその旨を伝えて構いません。ただし今後も長い付き合いになる相手なので、頭ごなしに拒否するのではなく、根拠を示しながら話し合う姿勢が大切です。判断に迷う場合は、借地権に詳しい専門家に相談しましょう。
「相続では不要」「売却や建替えでは必要」という承諾の線引きは、混同しやすいところです。どんな場面で承諾が必要になり、相場はいくらなのかは借地のリノベーションに地主の承諾は必要?承諾料の相場と対処法で整理しました。相続後にリフォームや建替えを考えている方は、あわせて確認しておいてください。
相続放棄はできる?
「地代を払い続けるのが負担」「使う予定がない」といった理由で、相続放棄を検討する方もいます。借地権も相続財産なので、放棄の対象に含めることは可能です。
ただし注意したいのは、借地権だけを選んで放棄することはできないという点。相続放棄をすると、預貯金などのプラスの財産もすべて放棄することになります。期限も「相続を知った日から3ヶ月以内」と短いため、判断は早めに進める必要があります。
借地権を相続したときの手続き5ステップ
実際の手続きの流れを、順を追って確認していきましょう。通常の不動産相続と重なる部分も多いですが、借地権ならではのポイントもあります。
まず契約書を探しましょう。旧法か新法か、契約期間はいつまでか、増改築禁止特約はあるか。今後の判断のすべてがここから始まります。見つからない場合は、地主に写しをもらうか、法務局で建物の登記事項証明書を取得して手がかりを探します。
承諾は不要ですが、連絡はしておくのがマナーです。相続が発生したこと、誰が引き継ぐことになりそうかを伝えます。地代の振込先や連絡先の変更もこのタイミングで確認しておきましょう。
相続人が複数いる場合、誰が借地権と建物を引き継ぐかを話し合いで決めます。合意内容は遺産分割協議書にまとめ、相続人全員が署名・押印します。
借地上の建物の名義を、被相続人から相続人へ変更します。2024年4月から相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内の申請が必要です。
遺産総額が基礎控除を超える場合は、相続を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告・納付します。借地権も相続財産として評価額を計算する必要があります。
相続放棄の3ヶ月、相続税の10ヶ月、登記の3年。期限つき手続きの全体像と必要書類は次の記事にまとめています。


建物の相続登記は義務(3年以内)
借地権そのものには登記がないケースがほとんどですが、建物の登記は必ず行いましょう。実は、建物の登記には借地権を守るという重要な役割があるんです。
借地借家法では、借地上の建物を登記していれば、土地の所有者が変わっても新しい地主に借地権を主張できると定められています。逆に登記していないと、土地が売却された場合に立ち退きを求められるリスクが生じます。
相続登記を怠ると10万円以下の過料の対象になるうえ、売却も賃貸もできません。名義変更は最優先で進めてください。
地主への通知はどう進める?
承諾は不要とはいえ、地主との関係は今後も続きます。伝え方ひとつで、その後の関係性が変わってきます。
承諾は不要でも連絡はしておく
法的な義務はありませんが、相続が発生したことは早めに伝えておきましょう。地主にしてみれば、地代を払う相手が変わるわけですから、知らされないのは不安なものです。
連絡しないまま地代の振込名義だけが変わると、「誰が払っているのか」と不信感を招きかねません。今後の建替えや売却で承諾が必要になる場面を考えても、良好な関係を保っておくことは大きな意味があります。
通知の内容とタイミング
通知に決まった様式はありませんが、次の内容を伝えておくとスムーズです。
- 被相続人が亡くなった事実と時期
- 誰が借地権を引き継ぐ予定か(未定なら決まり次第連絡する旨)
- 地代の支払い方法・振込名義の変更について
- 新しい連絡先
タイミングは、葬儀などが落ち着いた頃で構いません。遺産分割が決まっていない段階でも、「相続が発生した」という事実だけ先に伝えておくと丁寧です。
契約者名義の変更について話し合う
借地契約書の名義を、被相続人から相続人へ書き換えるかどうかは話し合いで決めます。法的には名義変更をしなくても借地権は有効ですが、実務上は変更しておくほうが後々スムーズです。
この際に名義書換料を請求されることがありますが、前述のとおり相続に支払い義務はありません。ただ、円満な関係を優先して支払いに応じるケースもあります。判断に迷ったら専門家に相談しましょう。
借地権の相続税評価額の計算方法
相続税の申告が必要な場合、借地権の評価額を計算しなければなりません。計算式はシンプルなので、目安は自分でも把握できます。
借地権評価額=路線価×面積×借地権割合
借地権評価額 = 路線価 × 土地面積 × 借地権割合
たとえば路線価30万円/㎡、土地面積100㎡、借地権割合70%の場合、評価額は30万円×100㎡×70%=2,100万円となります。
路線価と借地権割合は、どちらも国税庁の路線価図で確認できます。路線価に「300C」と記載されていれば、1㎡あたり30万円・借地権割合70%という意味です。
路線価図の見方や、借地権割合のアルファベット対応表は次の記事で詳しく解説しています。


所有権より評価額が低くなる
借地権の相続で、数少ないメリットといえるのがこれです。同じ土地でも、所有権として相続するより評価額が借地権割合のぶんだけ低くなります。
| 権利の種類 | 評価額(路線価30万円・100㎡・割合70%) |
|---|---|
| 所有権 | 3,000万円 |
| 借地権 | 2,100万円 |
この例では900万円分、相続財産の評価が下がります。相続税の負担を抑えられるという点は、借地権の隠れた利点といえるでしょう。
小規模宅地等の特例も使える
借地権にも「小規模宅地等の特例」が適用できます。被相続人が住んでいた土地であれば、330㎡までの部分について評価額を最大80%減額できる制度です。
先ほどの例で特例が使えれば、2,100万円の評価額が420万円まで下がる計算に。適用には配偶者や同居親族が相続するなどの条件があるため、税理士に確認しながら進めましょう。



借地権は「相続税では有利、日常の自由度では不利」という性格。どちらを重く見るかで、相続後の判断が変わってきますね。
相続した借地権をどうする?4つの選択肢
手続きが済んだら、次は「この借地権をどうするか」という判断です。主な選択肢を整理しておきましょう。
①住む・リノベーションして活用する
建物は自分の資産なので、リノベーションして住み続けたり、賃貸に出したりできます。土地の固定資産税がかからないぶん、賃貸に出す場合の収支は良くなりやすいのが特徴です。
ただし、大規模な増改築には地主の承諾が必要になることが多い点は押さえておきましょう。内装や水回りの交換程度なら承諾は原則不要です。
築年数別の工事費の目安は次の記事で確認できます。承諾料も含めた総額で採算を判断してみてください。


②地主に買い取ってもらう
手放したい場合、まず検討したいのが地主への売却です。地主にとっては土地を完全な所有権にできるメリットがあり、こちらは譲渡承諾料を払わずに済みます。
話がまとまれば手続きもシンプル。まずは打診してみて、反応を見るところから始めましょう。
③底地と同時売却する
地主と協力して、借地権と底地をセットで第三者に売る方法です。完全な所有権として売れるため、バラバラに売るより高い価格がつきやすくなります。
売却代金は借地権割合に応じて分けるのが一般的。地主が相続対策で底地を整理したいと考えているなら、双方にとって理想的な出口になります。
地主に提案する際は、相手にとってのメリットを整理して伝えると話が進みます。同時売却や等価交換の進め方は底地の整理方法4選|交渉・等価交換・同時売却の進め方で解説しました。
④専門の買取業者に売却する
地主との交渉が難しい場合や、早く現金化したい場合は、借地権を専門に扱う買取業者に売る選択肢もあります。地主との交渉を含めて対応してくれる業者なら、負担を大きく減らせます。
一般の不動産会社では扱いにくい借地権付き物件も、専門業者なら現況のまま買い取ってもらえるケースが少なくありません。


相続した建物が空き家のまま放置されている場合は、活用・売却・解体を含めた出口全体で比較するのが確実です。それぞれの費用と手残りは空き家の処分方法7選で整理しました。借地の場合は地代が発生し続けるぶん、判断を先送りするほど不利になります。
借地権相続でよくあるトラブルと対策
最後に、借地権の相続で起こりやすいトラブルと、その予防策を確認しておきましょう。
名義書換料を請求された
もっとも多いのがこのケースです。繰り返しになりますが、相続に名義書換料の支払い義務はありません。「相続なので承諾料は発生しないと理解しています」と丁寧に伝えましょう。
それでも強く求められる場合は、借地権に詳しい弁護士や不動産会社に相談を。感情的に対立すると、その後の建替えや売却の承諾交渉にも影響します。
地代の値上げを求められた
相続を機に、地代の値上げを持ちかけられることもあります。これも応じる義務はなく、周辺の地代相場や固定資産税額を確認したうえで話し合うのが基本です。
合意できない場合は、調停や訴訟で適正な地代を決める手続きもあります。まずは根拠を確認するところから始めましょう。
いま払っている地代が適正水準かどうかは、複数の計算方式で検証できます。底地の地代はいくらが適正?計算方法と値上げ交渉の進め方を参考に、根拠を持って交渉に臨んでください。数字で示せると、話し合いが感情論になりにくくなります。
相続人が複数いて分けられない
借地権と建物は物理的に分割できないため、相続人が複数いると揉めやすいテーマです。共有名義にすると、その後の売却や建替えに全員の同意が必要になり、身動きが取れなくなります。
「とりあえず共有にしておく」という選択は、問題の先送りになりがちです。次の相続が発生すると権利者がさらに増え、収拾がつかなくなります。1人が単独で相続して他の相続人に代償金を払う、あるいは売却して現金で分ける(換価分割)といった方法で、共有状態を作らないのが賢明です。
すでに共有名義になってしまっている場合の解消方法は共有名義の不動産を相続したら?手続き5ステップと共有解消の出口で解説しています。放置すると次の相続でさらに複雑化するため、早めに道筋をつけておいてください。
建物が老朽化していて活用できない
相続した建物が古く、そのままでは住むことも貸すこともできないケースも多いものです。建替えには地主の承諾と承諾料が必要になるため、ハードルが高いと感じるかもしれません。
ただ、建物の骨格を残すリノベーションであれば、承諾が不要なケースも多く、費用も建替えより抑えられます。「古いから解体するしかない」と決めつける前に、リノベーションで再生できないか検討してみる価値はあります。
設計から施工、アフターメンテナンスまで一貫して対応できる会社なら、権利関係を踏まえたうえで最適なプランを提案してもらえます。活用か売却かで迷っている段階から相談できると、判断がしやすくなりますよ。
借地権の相続に関するよくある質問(FAQ)
最後に、借地権の相続についてよく寄せられる疑問にお答えします。
- 借地権を相続するとき地主の承諾は必要ですか?
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必要ありません。相続は法律上当然に権利が引き継がれるため、地主の承諾は不要で、承諾料や名義書換料の支払い義務もありません。売却の場合は承諾が必要になりますが、相続とは性質が異なります。ただし、今後の関係を考えて相続の事実は早めに伝えておくとよいでしょう。
- 地主から名義書換料を請求されたら払うべきですか?
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相続の場合、法的な支払い義務はありません。「相続なので承諾料は発生しないと理解しています」と丁寧に伝えて構いません。ただし今後も長い付き合いになる相手なので、頭ごなしに拒否せず、根拠を示しながら話し合う姿勢が大切です。強く求められる場合は、借地権に詳しい専門家に相談しましょう。
- 借地権の相続税評価額はどう計算しますか?
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「路線価×土地面積×借地権割合」で計算します。路線価30万円/㎡、面積100㎡、借地権割合70%なら2,100万円です。路線価と借地権割合は国税庁の路線価図で確認できます。所有権として相続するより評価額が低くなるため、相続税の負担を抑えられる点は借地権のメリットです。
- 借地権に小規模宅地等の特例は使えますか?
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使えます。被相続人が住んでいた土地であれば、330㎡までの部分について評価額を最大80%減額できます。適用には配偶者や同居親族が相続するなどの条件があるため、税理士に確認しながら進めるのが確実です。
- 相続人が複数いる場合はどうすればいいですか?
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借地権と建物は物理的に分割できないため、共有名義は避けるのが基本です。共有にすると売却や建替えに全員の同意が必要になり、次の相続で権利者がさらに増えて収拾がつかなくなります。1人が単独で相続して他の相続人に代償金を払う、または売却して現金で分ける換価分割といった方法で、共有状態を作らないようにしましょう。
まとめ|承諾は不要、でも地主との関係は大切に
借地権の相続について、手続きの流れから相続税評価、相続後の選択肢まで見てきました。要点を振り返っておきましょう。
- 借地権の相続に地主の承諾は不要。承諾料・名義書換料の支払い義務もない
- 手続きは「契約書確認→地主へ通知→遺産分割→相続登記→相続税申告」の5ステップ
- 建物の相続登記は義務(3年以内)。登記が借地権を守る役割も果たす
- 相続税評価額は「路線価×面積×借地権割合」。所有権より評価が低く小規模宅地等の特例も使える
- 相続後は「活用・地主へ売却・同時売却・専門業者へ売却」の4択
- 共有名義は避ける。次の相続で権利関係がさらに複雑になる
借地権の相続は、承諾が不要というルールさえ知っていれば、必要以上に身構えることはありません。大切なのは、期限のある手続きを着実に進めることと、地主との関係を良好に保つこと。この2つを押さえておけば、その後の選択肢も広がります。
借地権の基礎知識をおさらいしたい方はピラー記事を、売却を考えている方は売却相場の記事を、リフォームや建替えを検討している方は承諾の記事を、あわせて参考にしてみてください。



