「相続した底地、いくらで売れるんだろう?」「相続税評価額は900万円と言われたけれど、その金額で売れるの?」。底地の売却を考え始めると、必ずこの疑問にぶつかります。
結論からお伝えすると、底地の買取相場は売却先によって大きく変わります。借地人に売れば更地価格の3〜4割程度、第三者や買取業者なら1〜2割程度。同じ土地でも、誰に売るかで手取りが倍以上変わることも珍しくありません。
この記事では、底地価格の計算方法と売却先ごとの相場を具体的な数字で解説します。相続税評価額と実勢価格のギャップがなぜ生まれるのか、少しでも高く売るにはどうすればいいのかまで、売却を検討している地主の方に向けて整理しました。

底地は「誰に売るか」で価格が決まる、ちょっと特殊な不動産です。まずはその構造から理解していきましょう。
底地の仕組みや借地権との関係から確認したい方は底地とは?借地権との違いから地代・売却方法まで図解で解説を先にご覧ください。
底地の買取相場は更地価格の1〜4割
まずは相場の全体像から押さえましょう。底地の価格は、その土地を更地で売った場合の価格をベースに算出されます。
相続税評価額の計算式
相続税の計算で使われる底地(貸宅地)の評価額は、次の式で求めます。
底地の評価額 = 更地価格 ×(1 − 借地権割合)
更地価格3,000万円・借地権割合70%の土地なら、3,000万円×30%=900万円が評価額です。借地権割合は国税庁の路線価図で確認でき、住宅地では60〜70%に設定されていることが多くなっています。
実勢価格は評価額を大きく下回る
ここが底地の最大の特徴です。相続税評価額が900万円でも、実際に売れる金額はその半分以下になることも珍しくありません。
理由はシンプルで、買い手が極端に少ないから。土地を買っても自分では使えず、得られるのは利回り1〜2%の地代収入だけ。しかも借地人との交渉というリスクを抱え込むことになります。投資対象としての魅力に乏しいため、価格が下がるわけです。
売却先別の相場早見表
底地の価格は、売却先によって次のように変わります。更地価格3,000万円・借地権割合70%の土地を例に見てみましょう。
| 売却先 | 更地価格に対する割合 | 金額の目安 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 借地人 | 30〜40% | 900万〜1,200万円 | 完全所有権になる価値がある |
| 同時売却(借地権とセット) | 30%前後 | 900万円前後 | 更地として売れるため配分も適正 |
| 専門買取業者 | 10〜20% | 300万〜600万円 | 交渉リスクを見込んだ査定 |
| 一般の第三者 | 10%前後 | 300万円前後 | 買い手がほぼ見つからない |
借地人に売る場合と業者に売る場合で、手取りが3倍以上変わることもあります。「どこに売るか」を検討せずに動くと、大きく損をしかねません。
なぜ売却先で価格が変わるのか
同じ土地なのに、なぜこれほど価格差が出るのでしょうか。買い手それぞれの立場から見ていくと、理由がはっきりします。
借地人にとっては「完全所有権になる」特別な価値
借地人が底地を買うと、土地と建物の両方が自分のものになります。建替えも売却も地主の承諾なしに自由。地代の支払いもなくなり、承諾料の心配も消えます。
さらに大きいのが、資産価値の跳ね上がりです。借地権付き建物として売れば更地価格の6〜7割ですが、完全所有権になれば100%の価値で売れます。底地を買う費用以上に資産価値が増えるため、借地人にとっては合理的な投資になるんですね。
借地人側から見た価格の考え方は借地権の売却相場は更地価格の何割?計算方法と高く売るコツで解説しています。相手が自分の権利をいくらと評価しているかを知っておくと、提示金額の妥当性を説明しやすくなります。
第三者にとっては「使えない土地」
一方、借地人以外の買い手にとって底地は、まったく別の意味を持ちます。
- 土地の上に他人の建物が建っていて、自分では使えない
- 収益は地代のみで、実質利回りは1〜2%程度
- 地代の値上げ交渉や滞納対応など、借地人とのやり取りが発生する
- 売りたくなっても、次の買い手を見つけるのが難しい
これだけの制約を引き受けるとなれば、価格を大きく下げないと買い手は現れません。だからこそ、一般の第三者への売却は更地価格の10%前後まで下がってしまうわけです。
買取業者は交渉リスクを織り込んで査定する
底地専門の買取業者は、買い取った後に借地人と交渉して権利関係を整理し、完全所有権化して転売するというビジネスモデルです。
ただし、その交渉が必ず成功する保証はありません。借地人が応じなければ、地代収入だけの低利回り資産を抱え続けることになります。このリスクを見込むぶん、査定額は更地価格の10〜20%程度に抑えられるのが一般的です。



「使えるか使えないか」で価値がまるで違う。これが底地の価格を理解するうえでの核心です。
底地価格を左右する5つの要素
売却先のほかにも、価格に影響する要素があります。自分の底地がどの水準になりそうか、判断の材料にしてください。
①地代の水準
投資対象として見た場合、収益性がそのまま価格に反映されます。地代が相場より高く設定されていれば利回りが良くなり、底地の価格も上がります。
逆に、何十年も地代を据え置いたままだと、固定資産税を差し引くとほとんど利益が残らない状態に。こうなると買取業者の査定額も下がります。
いまの地代が適正水準かどうかは、複数の計算方式で検証できます。売却前に見直しておくと、査定額が変わる可能性があります。


②借地人との関係性
意外に思われるかもしれませんが、これも価格に影響します。地代の滞納がある、過去にトラブルがある、連絡が取れないといった状況では、買取業者は将来の交渉難航を見込んで査定額を下げます。
逆に、借地人と良好な関係が続いていて、底地の買い取りに前向きな意向があるなら、それ自体が価値になります。
③契約内容(旧法か新法か・残存期間)
旧法借地権は借地人の保護が非常に手厚く、実質的に土地が返ってこないため、底地の価格は低くなりがちです。
一方、定期借地権であれば期間満了で確実に土地が戻ってきます。残存期間が短ければ、更地としての価値に近づくため、底地価格は高くなります。
自分の底地に設定されているのがどの種類の借地権なのかは、契約書で確認できます。旧法・普通借地権・定期借地権の違いは借地権とは?種類・期間・費用の基礎を図解でわかりやすく解説で整理しました。査定を受ける前に把握しておくと、提示額の根拠を理解しやすくなります。
④土地の立地・形状
ベースになる更地価格が高ければ、底地価格も相対的に高くなります。駅近や人気エリアの土地なら、将来的に完全所有権化したときの価値が大きいため、買取業者も積極的に評価します。
形状も重要です。整形地で分割しやすい土地なら等価交換という出口も描けるため、評価が上がります。
⑤借地権割合
借地権割合が低い地域ほど、底地の取り分が大きくなります。借地権割合60%なら底地は40%、70%なら30%という関係です。
ただし、これはあくまで評価上の話。実勢価格では、割合以上に「売却先」の影響が大きいことは押さえておきましょう。
底地を高く売るための進め方
相場の構造が分かったところで、実際に高く売るための手順を見ていきましょう。順番が結果を左右します。
①まず借地人に打診する
最初にやるべきは、借地人への打診です。もっとも高い価格が期待できる相手ですから、ここを飛ばして業者に売るのはもったいない。
「土地を買いませんか」と唐突に切り出すのではなく、借地人にとってのメリット(完全所有権になる・地代が不要になる・資産価値が上がる)を整理して伝えるのがコツです。
②同時売却を提案する
借地人に買い取る資金がない場合でも、諦める必要はありません。借地権とセットで第三者に売る「同時売却」なら、双方が現金を手にできます。
買い手にとっては制約のない完全な所有権になるため、住宅ローンも使えて購入希望者の幅が広がります。バラバラに売る合計額より高く売れるのが一般的です。
同時売却や等価交換の具体的な進め方、借地人への切り出し方は次の記事にまとめています。


③複数の買取業者から査定を取る
借地人との交渉が難しい場合は、専門の買取業者に相談します。このとき大切なのが、1社だけで決めないことです。
底地の査定は業者によって考え方が異なり、金額に大きな差が出ます。借地人との交渉に自信のある業者なら高く評価してくれますし、慎重な業者なら低めの提示になります。最低でも3社は比較しましょう。
- 借地契約書(旧法か新法か、契約期間、地代の額)
- 登記事項証明書・公図・測量図
- 固定資産税の納税通知書
- 地代の入金記録(滞納の有無がわかるもの)
資料が揃っていると査定が正確になり、「リスクが読めないから低めに」という減額を避けられます。
権利関係が複雑な物件を扱う業者のタイプと選び方は、次の記事で比較しました。


④地代を適正化してから売る
時間に余裕があるなら、売却前に地代の見直しを検討する手もあります。地代が上がれば利回りが改善し、買取業者の査定額も上がる可能性があるからです。
ただし、値上げ交渉と売却の打診を同時に進めると、借地人に不信感を持たれかねません。「まず地代を適正化して数年運用し、その後に売却」という順序が現実的です。
売却時に知っておきたい税金と注意点
最後に、売却を進めるうえで押さえておきたい税金と注意点を確認しておきましょう。
譲渡所得税の税率
底地を売って利益が出れば、譲渡所得税・住民税がかかります。税率は所有期間で変わります。
| 所有期間 | 区分 | 税率(所得税+住民税) |
|---|---|---|
| 5年超 | 長期譲渡所得 | 20.315% |
| 5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63% |
相続で取得した底地は、被相続人が取得した日から所有期間を計算できます。先代から引き継いだ土地であれば、長期譲渡所得として低い税率が適用されるケースが多いでしょう。
相続税の取得費加算の特例
相続した底地を売る場合、知っておきたい制度があります。相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却すれば、支払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税を圧縮できるという特例です。
底地は相続税評価額が高く出やすい資産なので、この特例の効果は大きくなりがちです。相続から3年10ヶ月以内という期限があるため、売却を考えているなら早めに動きましょう。
相続登記が済んでいなければ、そもそも売却できません。期限つき手続きの全体像は空き家を相続したらやるべき手続き完全ガイドで確認できます。特例の期限から逆算すると、名義変更は最優先で進めるべき作業です。
借地人への通知は必要か
底地の売却に、借地人の承諾は必要ありません。地主が自分の所有物を売るだけなので、法的には自由に売却できます。
ただし、借地人には借地権の対抗力があります。建物が登記されていれば、新しい地主に対しても借地権を主張できるため、買い手はその前提で購入することになります。
承諾は不要とはいえ、黙って売却すると借地人との関係が悪化します。「地主が変わっていた」と後から知れば、不信感を抱くのは当然でしょう。売却の意向は早めに伝えておくのがマナーです。
共有名義の場合は全員の同意が必要
兄弟姉妹で底地を共有相続している場合、売却には共有者全員の同意が必要です。1人でも反対すれば話は進みません。
もともと買い手が限られる資産なので、共有になるとさらに動かしにくくなります。売却を検討するなら、まず身内の意思統一を済ませておきましょう。
共有状態の解消方法や、意見がまとまらないときの選択肢は共有名義の不動産を相続したら?手続き5ステップと共有解消の出口で解説しました。放置すると次の相続で権利者がさらに増え、売却は事実上不可能になります。
底地の買取相場に関するよくある質問(FAQ)
最後に、底地の買取相場についてよく寄せられる疑問にお答えします。
- 底地の買取相場はどのくらいですか?
-
売却先によって大きく変わります。借地人に売る場合は更地価格の30〜40%程度、専門の買取業者なら10〜20%程度、一般の第三者では10%前後が目安です。同じ土地でも手取りが3倍以上変わることがあるため、どこに売るかの検討が重要になります。
- 相続税評価額どおりの金額で売れますか?
-
売れないことが多いです。相続税評価額は「更地価格×(1−借地権割合)」で計算されますが、実際の取引では買い手が限られるため、評価額の半分以下になることも珍しくありません。借地人に売れる場合は評価額に近い水準が期待できますが、第三者への売却では大きく下回ります。
- なぜ借地人に売ると高くなるのですか?
-
借地人にとっては、底地を買えば土地と建物の両方が自分のものになり、完全な所有権になるからです。建替えも売却も自由になり、地代の支払いもなくなります。借地権付き建物は更地価格の6〜7割の価値ですが、完全所有権なら100%の価値で売れるため、購入費用以上に資産価値が増える計算になります。
- 底地の売却に借地人の承諾は必要ですか?
-
必要ありません。地主が自分の所有物を売るだけなので、法的には自由に売却できます。ただし借地人には借地権の対抗力があり、建物が登記されていれば新しい地主にも借地権を主張できます。承諾は不要でも、黙って売ると関係が悪化するため、意向は早めに伝えておくのがマナーです。
- 相続した底地を売るとき税金の特例はありますか?
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「相続税の取得費加算の特例」が使えます。相続税の申告期限の翌日から3年以内(相続開始から3年10ヶ月以内)に売却すれば、支払った相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税を圧縮できます。底地は相続税評価額が高く出やすいため効果が大きく、期限もあるので早めの検討がおすすめです。
まとめ|売却先の選択が価格を決める
底地の買取相場と価格が決まる仕組みについて見てきました。要点を振り返っておきましょう。
- 底地の買取相場は更地価格の1〜4割。売却先によって手取りが3倍以上変わる
- 借地人へは30〜40%、買取業者は10〜20%、一般の第三者は10%前後が目安
- 相続税評価額と実勢価格には大きなギャップがある
- 価格を左右するのは「地代水準・借地人との関係・契約内容・立地・借地権割合」
- 進め方は「①借地人へ打診 ②同時売却の提案 ③複数業者で比較」の順
- 相続した底地は「取得費加算の特例」で税負担を軽減できる(3年10ヶ月以内)
底地は「いくらで売れるか」より先に、「誰に売るか」を考えるべき不動産です。同じ土地でも相手によって価値がまったく違うからこそ、順序を踏んで進めることが手取りを最大化する鍵になります。
底地の基礎知識をおさらいしたい方はピラー記事を、具体的な整理の進め方を知りたい方は整理方法の記事を、当面は保有を続ける方は地代の記事を、あわせて参考にしてみてください。





