「共有名義の実家をリノベーションして住みたいけど、他の共有者の同意っているの?」「費用は自分が出すのに、なぜ許可が必要なの?」と悩んでいる方は多いと思います。共有物件のリノベは、自分1人の判断では進められないことが多く、どう合意を取ればいいか分かりにくいですよね。
結論からお伝えすると、共有物件のリノベーションに必要な同意は、工事の規模によって変わります。軽微な変更は持分の過半数、間取りを変えるような大規模リノベは共有者全員の同意が必要です。たとえ費用を全額自分で負担する場合でも、同意は欠かせません。
この記事では、工事の規模ごとに必要な同意の範囲、2023年の民法改正で変わったルール、合意形成の5ステップ、費用負担と合意書のポイント、同意が取れない場合の対処法まで、共有物件のリノベを実現するための実務を整理しました。ぜひ参考にしてください。
なお、そもそも共有持分とは何か、権利関係の基本から確認したい方は、共有持分とは?権利関係・売却方法・トラブル解決を先に読んでおくと、この記事の同意ルールが理解しやすくなります。

まずは「自分がやりたい工事に、どこまでの同意が必要か」を見極めることが第一歩。ここが分かると、誰にどう話を通せばいいかが見えてきますよ。
共有物件のリノベーションに他の共有者の同意は必要?
共有物件のリノベで同意が必要かどうかは、「工事の規模・内容」で決まります。民法では、共有物への行為を規模に応じて分類し、必要な同意の範囲を定めているのです。
工事の規模で必要な同意が変わる【早見表】
リノベーションの内容ごとに、必要な同意を整理すると次のようになります。
| 工事の内容 | 行為の区分 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 雨漏りの修理、壊れた設備の補修 | 保存行為 | 単独でできる |
| クロス張り替え、軽微な改良 | 軽微な変更・管理行為 | 持分の過半数 |
| 間取り変更をともなう大規模リノベ | 変更行為 | 全員の同意 |
| 増改築、構造を変える工事 | 変更行為 | 全員の同意 |
軽微な変更・管理行為は持分の過半数
建物の性質や形状を大きく変えない範囲の工事は、共有者の持分の価格の過半数の同意で実施可能です。壁紙の張り替えや、設備の入れ替えといった軽微な改良がこれにあたります。
ここで注意したいのが、頭数ではなく「持分割合」の過半数という点です。たとえば共有者が3人でも、持分の過半数を握る人の同意があれば、軽微な工事は進められます。後述する2023年の民法改正で、この範囲が広がりました。
大規模リノベ・構造変更は全員の同意
一方、間取りを大きく変えるリノベーションや、増改築、建物の構造に手を入れる工事は「変更行為」にあたり、共有者全員の同意が必要になります。建物の性質や価値を大きく変える工事にあたるためです。
フルリノベーションのように住まいを一新する工事は、この変更行為に該当することがほとんどです。共有者が1人でも反対すれば実施できないため、合意形成が最大のハードルになります。
費用を全額自己負担でも同意は必要
「費用は全部自分が出すのだから、好きにリノベしていいはず」と考えがちですが、これは誤りです。共有名義の不動産は、費用を誰が負担するかにかかわらず、工事の規模に応じた同意が必要になります。
共有物は、物理的な建物だけでなく、その利用や処分に関する権利も複数人で持っている状態だからです。自己負担だからと無断で工事を進めると、他の共有者とのトラブルの原因になり、法的な責任を問われることもあります。
【2023年民法改正】軽微変更は過半数の同意でできるように
共有物件のリノベを考えるうえで、ぜひ知っておきたいのが2023年(令和5年)4月に施行された民法改正です。リノベのハードルが下がる、重要な変更が加えられました。
改正前は「変更行為=全員同意」だった
改正前の民法では、共有物に物理的な変更を加える行為は、その程度にかかわらず一律で「変更行為」とされ、共有者全員の同意が必要でした。そのため、ちょっとした改良でも、共有者が1人でも反対すれば実施できず、不動産の有効活用が滞る原因になっていました。
改正で「軽微変更」は持分の過半数に緩和
2023年4月の改正で、変更行為のうち「その形状または効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)」は、持分の過半数の同意で実施できるようになりました。全員の同意が取れなくても、過半数さえ得られれば進められる工事の範囲が広がったのです。
たとえば、砂利道をアスファルトで舗装する行為は、改正前は全員の同意が必要な変更行為でしたが、改正後は軽微変更として持分の過半数で実施できるようになりました。共有物件の活用を後押しする改正といえます。
どこまでが軽微変更か(判断の目安)
ポイントは、その工事が建物の「形状または効用の著しい変更」を伴うかどうかです。伴わなければ軽微変更として過半数で、伴えば変更行為として全員の同意が必要になります。
軽微変更にあたるか、全員同意が必要な変更行為にあたるかは、工事の内容によって判断が分かれる難しいケースもあります。外壁の塗り替えのような工事は軽微変更と考えられますが、間取りを変えるリノベは通常、全員の同意が必要な変更行為です。判断に迷う場合は、自己判断で進めず、専門家に確認するのが安全です。誤った判断で工事を進めると、後で無効を主張されるリスクがあります。
共有物件リノベの合意形成5ステップ
必要な同意の範囲が分かったら、いよいよ合意形成です。共有者との話し合いを円滑に進め、トラブルなくリノベを実現するための5つのステップを見ていきましょう。
STEP1 工事内容を固め、必要な同意範囲を確認する
まず、どんなリノベをするのか、工事の内容を具体的に固めます。そのうえで、その工事が過半数の同意で足りる軽微変更なのか、全員の同意が必要な変更行為なのかを見極めましょう。
あわせて、登記事項証明書で共有者と持分割合も確認しておきます。相続した実家で相続登記が済んでいない場合は、名義を確定させるのが先です。手続きの流れと期限は空き家を相続したらやるべき手続きで整理しています。
この判断を最初にしておくことで、誰の同意を得る必要があるかが明確になります。判断が難しい工事は、リノベ会社や専門家に相談して同意範囲を見極めておくと、後の手戻りを防げるはずです。
STEP2 共有者に目的とメリットを説明する
次に、同意が必要な共有者へ、リノベの目的とメリットを丁寧に説明します。なぜリノベをするのか、それによって不動産の価値や住み心地がどう良くなるのかを、誠実に伝えることが合意への近道です。
共有者にとっては、資産価値の向上というメリットがある一方で、費用負担への不安もあります。相手の立場に立って、懸念に丁寧に答える姿勢が信頼につながります。頭ごなしに「リノベするから」と通知するのは避けましょう。
STEP3 費用の負担割合を取り決める
リノベの合意で最ももめやすいのが、費用の負担です。誰がどの割合で費用を負担するのかを、着工前に明確に取り決めておきます。後述するように、負担割合は法律上の原則がありますが、共有者間の合意で変えることも可能です。
「住む人が全額負担する」「持分割合で分ける」など、実態に合った形を話し合って決めましょう。ここを曖昧にすると、後で「言った言わない」のトラブルになりやすいので注意が必要です。
STEP4 合意内容を書面に残す
口約束は後のトラブルのもとです。工事内容や費用の負担割合など、合意した内容は必ず書面に残しましょう。共有者全員(または同意が必要な共有者)が署名・押印した合意書を作成しておくことが、将来の紛争を防ぎます。
特に費用負担を法律上の原則と変える場合は、書面がないと贈与とみなされる恐れも。合意書は、トラブル防止と税務の両面で重要な役割を果たします。
STEP5 着工する
必要な同意を得て、合意書を交わしたら、いよいよ着工です。ここまでのステップを踏んでおけば、共有者との認識のズレがなく、安心して工事を進められます。
工事中や工事後に共有者から異議が出ないよう、進捗を共有しておくとより丁寧です。合意形成に手間をかけた分、リノベ後の共有関係も良好に保てます。
リノベ費用の負担と合意書のポイント
合意形成でカギになる費用負担と合意書について、もう少しくわしく見ていきましょう。ここを押さえておくと、トラブルと余計な税負担を防げます。
費用は持分割合で負担するのが原則(民法253条)
共有物にかかる費用は、各共有者が持分割合に応じて負担するのが法律上の原則です(民法253条)。これは、リノベが管理行為か変更行為かにかかわらず適用されます。
たとえば、持分が3分の2のAさんと3分の1のBさんがいる共有物件で900万円のリノベをする場合、原則としてAさんが600万円、Bさんが300万円を負担することになります。まずはこの原則を押さえておきましょう。
負担割合を話し合う前提として、工事にいくらかかるのかの相場観も必要です。築年数別の費用の目安は下記の記事にまとめているので、共有者への説明資料づくりにも役立ててください。


負担割合を変えると贈与税のリスク(書面化が必須)
費用の負担割合は、共有者間の合意で自由に変えられます。「実際に住むAさんが全額負担する」といった取り決めも可能です。ただし、ここに贈与税のリスクが潜んでいます。
持分割合と異なる負担をすると、負担が軽くなった共有者が、その差額分の利益を贈与されたとみなされる場合があるのです。将来の売却時の譲渡所得の計算にも影響します。こうしたリスクを避けるためにも、なぜその負担割合にするのかを含め、合意内容を書面で明確に残しておくことが欠かせません。
合意書に盛り込むべき項目
リノベの合意書には、少なくとも次の項目を盛り込んでおくと安心です。
- 対象となる共有物件の表示(所在・地番など)
- 工事の具体的な内容と範囲
- 総費用と、各共有者の負担割合・負担額
- 費用負担が持分割合と異なる場合はその理由
- 共有者全員(または同意者)の署名・押印と日付
合意書の作成に不安がある場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談すると、法的に有効で漏れのない書面を整えられます。
共有者の同意が取れない場合の対処法
丁寧に話し合っても、共有者の同意が得られないこともあります。連絡が取れない、反対されるといったケースの対処法を見ていきましょう。
所在不明の共有者は裁判所の手続きで対応
共有者の中に、連絡が取れず所在が分からない人がいると、全員の同意が必要な変更行為は進められません。以前はこの状態が大きな壁でしたが、民法改正により対処の道が整備されました。
現在は、必要な調査を尽くしても共有者の所在が分からない場合、裁判所の決定を得ることで、所在不明の共有者以外の同意で変更を加えられるようになっています。裁判所の手続きを経て、所在不明の共有者の持分を取得したり、第三者に譲渡したりする制度も設けられました。ただし、戸籍や住民票の調査、裁判所への申立てが必要なため、弁護士など専門家のサポートが欠かせません。
そもそも共有者が増えすぎる原因の多くは、相続の繰り返しにあります。共有名義の不動産を相続したときの手続きと、共有を解消するまでの流れは下記の記事で解説しています。


どうしても合意できないなら共有状態の解消も
所在は分かっていても、共有者が頑なに反対してどうしても合意できない場合、リノベそのものを諦めざるを得ないこともあります。そんなときは、リノベにこだわらず、共有状態そのものを解消するという選択肢も検討してみましょう。
たとえば、他の共有者の持分を買い取って単独所有にすれば、自由にリノベが可能です。逆に、自分の共有持分を売却して共有関係から抜ける方法もあります。共有者の同意なしに売却する手順と注意点は、下記の記事でくわしく解説しています。


話し合いがまとまらない場合は、裁判所に共有物分割請求をする道もあります。訴訟の流れ・費用・期間は下記の記事を参考にしてください。


共有物件のリノベは専門家への相談がスムーズ
ここまで見てきたように、共有物件のリノベは、法律の知識と共有者との交渉、書面の作成まで、幅広い対応が求められます。1人で抱え込まず、専門家の力を借りるのが確実です。
設計・施工と法的手続きを一括で相談できると安心
共有物件のリノベをスムーズに進めるには、リノベーションの設計・施工だけでなく、同意範囲の判断や合意書の作成といった法的な手続きまで、まとめて相談できる体制が理想的といえます。窓口が分かれていると、話が伝わりにくく、手続きも煩雑になりがちです。
設計から施工までを一貫して手がけ、弁護士や司法書士などの士業とも連携できる会社であれば、複雑な共有物件のリノベも、合意形成から工事の完成まで一括でサポートしてもらえます。共有名義でリノベを諦めていた物件も、専門家に相談することで実現の道が開けることは少なくありません。まずは一度、共有物件の取り扱いに詳しい会社へ相談してみることをおすすめします。
共有物件のリノベーションに関するよくある質問(FAQ)
最後に、共有物件のリノベーションについてよく寄せられる疑問にお答えします。
- 共有物件をリノベーションするのに全員の同意は必要ですか?
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工事の規模によって変わります。壁紙の張り替えなど軽微な変更は持分の過半数の同意で実施できますが、間取りを変える大規模なリノベーションや増改築は変更行為にあたり、共有者全員の同意が必要です。フルリノベーションは通常、全員の同意が必要と考えておきましょう。
- 費用を全額自分で負担すれば同意なしでリノベできますか?
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できません。共有名義の不動産は、費用を誰が負担するかにかかわらず、工事の規模に応じた共有者の同意が必要です。共有物は利用や処分に関する権利も複数人で持っているためです。自己負担でも無断で工事を進めると、トラブルや法的責任の原因になります。
- 2023年の民法改正でリノベの同意ルールはどう変わりましたか?
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2023年4月の改正で、変更行為のうち「形状または効用の著しい変更を伴わない軽微変更」は、持分の過半数の同意で実施できるようになりました。改正前は物理的変更を伴う工事は一律で全員の同意が必要でしたが、軽微な工事は過半数で進められるよう緩和されています。
- リノベ費用は誰がどう負担するのですか?
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法律上は、各共有者が持分割合に応じて負担するのが原則です(民法253条)。ただし、共有者間の合意で「住む人が全額負担する」などと変えることも可能です。この場合、持分割合と異なる負担は贈与とみなされる恐れがあるため、合意内容を書面に残しておくことが重要です。
- 共有者と連絡が取れずリノベの同意が得られません。どうすればいいですか?
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民法改正により、必要な調査を尽くしても所在が分からない共有者がいる場合、裁判所の決定を得て、その共有者以外の同意で変更を加えられるようになりました。所在不明者の持分を取得する制度もあります。戸籍調査や裁判所への申立てが必要なため、弁護士など専門家に相談しましょう。
まとめ|共有物件のリノベは合意形成がカギ
共有物件のリノベーションに必要な合意形成について見てきました。要点を振り返っておきましょう。
- 共有物件のリノベは工事の規模で必要な同意が変わる。軽微は過半数、大規模は全員
- 費用を全額自己負担でも同意は必要
- 2023年民法改正で「軽微変更」は持分の過半数で実施できるようになった
- 合意形成は工事内容の確認→説明→費用の取り決め→書面化→着工の5ステップ
- 費用は持分割合負担が原則。割合を変えると贈与税リスクがあり書面化が必須
- 同意が取れないときは裁判所の手続きや共有状態の解消も選択肢
共有物件のリノベーションは、必要な同意の範囲を正しく理解し、共有者と丁寧に合意形成を進めれば、実現できます。2023年の民法改正で軽微な工事のハードルは下がりましたが、大規模リノベには全員の同意が必要です。書面化を徹底し、トラブルと余計な税負担を防ぎましょう。
共有持分の基礎知識をおさらいしたい方は、下記の記事もあわせて参考にしてみてください。共有物件の活用に向けた次の一歩が見つかるはずです。








