共有持分とは?権利関係・売却方法・トラブル解決をわかりやすく解説

「実家を兄弟で相続して共有名義になったけど、共有持分ってどういうもの?」「自分の一存で売ったり貸したりできるの?」と疑問に思っている方は多いと思います。共有持分は権利関係が複雑で、何が自由にできて何に同意がいるのか、分かりにくいですよね。

結論からお伝えすると、共有持分とは「1つの不動産を複数人で所有する場合の、それぞれの所有者が持つ権利の割合」のことです。共有持分を持っていても、不動産をどう扱うかは行為の種類によって、単独でできることと、他の共有者の同意が必要なことに分かれます。

この記事では、共有持分の定義や共有名義との違い、単独でできること・同意が必要なこと、メリット・デメリット、よくあるトラブルと解消方法まで、共有持分の基礎知識を体系的に整理しました。共有持分の全体像をつかみたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

まずは「共有持分=不動産全体に対する権利の割合」というイメージを押さえておきましょう。ここが分かると、このあとの権利やトラブルの話が理解しやすくなりますよ。

目次

共有持分とは?1つの不動産を複数人で持つ所有権の割合

まずは共有持分の基本的な定義から押さえていきましょう。似た言葉との違いも整理しておくと、理解がぐっと深まります。

共有持分の定義(民法上の所有権割合)

1つの不動産を複数人で所有することを「共有」といい、各共有者が持つ所有権の割合を「共有持分」と呼びます。たとえば、兄弟2人で実家を相続し、それぞれ2分の1ずつ権利を持つ場合、その「2分の1」が共有持分です。持分の割合は、登記事項証明書に「持分2分の1」のように記載されます。

注意したいのは、共有持分は「不動産の特定の場所を所有する権利」ではないという点です。持分が2分の1でも、建物の右半分だけを使える、という意味ではありません。各共有者は、持分の割合に応じて不動産全体に対する権利を持つ、という考え方です。

共有名義との違い

「共有名義」とよく似ていますが、両者は表裏一体の関係です。共有名義とは、1つの不動産を複数人が登記している状態のことを指します。その共有名義の状態で、各人が持つ権利の割合が共有持分です。

つまり、「兄弟3人の共有名義の家」で「1人あたりの共有持分は3分の1」といった使い方をします。名義が状態、持分が割合、と理解しておくと分かりやすいでしょう。

共有持分が発生する主なケース

共有持分は、次のような場面で発生します。意図せず共有状態になっているケースも少なくありません。

  • 相続……複数の相続人が1つの不動産を相続し、法定相続分などで共有する
  • 夫婦の共同購入……夫婦でペアローンや資金を出し合ってマイホームを購入する
  • 親子の共同購入……親子で資金を出し合って住宅を購入する
  • 共同出資……複数人で投資用不動産に出資して所有する

特に多いのが相続によるものです。出資額に応じて持分を決めるのが原則で、相続の場合は相続分に応じて持分が決まります。誰も住まない実家を相続して共有になったケースでは、空き家を相続したときの手続きと期限もあわせて確認しておくと、対応の抜け漏れを防げます。

共有持分でできること・できないこと【行為別の早見表】

共有持分でいちばん重要なのが、「何を単独でできて、何に同意が必要か」というルールです。民法では、共有物に対する行為を3つに分け、それぞれ必要な同意の範囲を定めています。

スクロールできます
行為の種類必要な同意具体例
保存行為単独でできる修繕、不法占拠者への明渡請求
管理行為持分の過半数賃貸借契約、軽微な改良
変更(処分)行為共有者全員の同意売却、建て替え、増改築

保存行為(単独でできる)

保存行為とは、共有物の現状を維持するための行為です。共有者は単独で行えます(民法252条但書)。具体的には、建物の雨漏りの応急処置や修繕、不法占拠している第三者への明渡請求、共有不動産の相続登記などが該当します。

共有者の誰か1人が迅速に対応できるため、緊急時にも柔軟に動ける仕組みです。ただし、大規模な修繕は保存行為を超え、管理行為や変更行為にあたる場合があるので注意しましょう。

管理行為(持分の過半数の同意)

管理行為とは、共有物の性質を変えない範囲で、利用・改良する行為です。共有者の持分の価格の過半数で決定します(民法252条)。頭数ではなく持分割合の過半数である点がポイントです。

具体的には、共有不動産を第三者に賃貸する契約や、性質を変えない範囲の軽微な改良などが該当します。たとえば空き家になった実家を賃貸に出す場合は、この管理行為として持分の過半数の同意が必要です。

変更(処分)行為(共有者全員の同意)

変更行為とは、共有物の性質や形状を大きく変える行為で、共有者全員の同意が必要です(民法251条)。不動産全体の売却、建て替え、増改築、不動産全体への抵当権の設定などが該当します。

共有者が1人でも反対すれば、不動産全体を売ったり大規模なリフォームをしたりはできません。この「全員の同意」というハードルが、後で述べるトラブルの最大の火種になります。

自分の持分だけなら単独で売却できる

ここで押さえておきたいのが、不動産全体の売却には全員の同意が必要でも、自分の共有持分だけなら、他の共有者の同意なく単独で売却できるという点です。自分の持分は自分の財産であり、自由に処分できるためです。

法律上は他の共有者への通知義務もありませんが、トラブル防止のため事前に知らせるのが望ましいとされます。ただし、持分だけの売却は買い手が限られ、価格も市場価格より下がる傾向があります。詳しくは、共有持分は同意なしで売却できるのかを解説した記事も参考にしてください。

共有持分のメリット・デメリット

共有で不動産を持つことには、良い面と難しい面の両方があります。特に相続や夫婦での購入を考えている方は、両方を理解しておくことが大切です。

メリットデメリット
住宅ローン控除を各自で使える
相続税の節税になる場合がある
資金を出し合い購入できる
活用・売却が自由にできない
相続で権利関係が複雑化する
トラブルに発展しやすい

メリットは税制優遇と資金力の分散

夫婦や親子で資金を出し合って購入する場合、それぞれが住宅ローンを組めば、住宅ローン控除を各自で受けられます。1人で購入するより控除の総額が増え、税制面で有利になるケースもあるのです。

1人では手が届かない価格の物件でも、複数人で資金を出し合えば購入できます。相続の場面でも、共有にすることで、いったんは公平に分けられるという利点も。相続税の観点から有利に働くケースもあります。

デメリットは活用のしにくさとトラブルリスク

最大のデメリットは、これまで見てきたとおり、不動産の活用・売却が自由にできないことです。売却や大規模なリフォームには共有者全員の同意が必要で、1人でも反対すれば話が進みません。「所有するのは簡単でも、手放すのが難しい」のが共有持分です。

共有者の1人に相続が発生すると持分がさらに細分化され、面識のない親族が新たな共有者として加わることもあります。時間の経過とともに権利関係が複雑になり、トラブルに発展しやすいのが共有の難しさです。動かせないまま空き家として放置すると、管理不全と判断されて固定資産税が最大6倍になるリスクも生じます。

共有持分でよくあるトラブル

共有持分は、当初は円満でも、時間が経つと意見の食い違いからトラブルに発展しがちです。代表的なものを知っておき、予防に役立てましょう。

共有者の一人が独占して使用している

よくあるのが、共有者の1人が共有不動産に住み続け、独占して使用しているケースです。たとえば、実家を兄弟で相続したものの、弟だけが実家に住み、家賃も払わずに暮らしているような状況です。

各共有者は持分に応じて共有物の全部を使用できるため、他の共有者は当然には明渡しを求められません。ただし、無償で独占する共有者に対しては、持分に応じた賃料相当額を不当利得として請求できる可能性があります。

活用・売却の意見が対立する

「売りたい人」と「残したい人」で意見が対立するのも典型的なトラブルです。売却には全員の同意が必要なため、1人でも反対すれば不動産は動かせず、長期間放置されることになります。

賃貸に出すかどうか、収益をどう分けるか、管理費を誰が負担するかなど、活用をめぐる意見の食い違いも起こりがちです。当初は信頼関係があっても、生活状況の変化で対立が表面化することは珍しくありません。

持分が第三者(買取業者)に売られる

共有者の1人が、自分の持分を第三者の買取業者などに売却してしまうことも。持分の単独売却は法律上可能なため、他の共有者が知らないうちに、見知らぬ業者が新たな共有者になっているケースも見られます。

持分を取得した業者から、残りの共有者に対して「持分を買い取ってほしい」「家賃を払ってほしい」と交渉が持ちかけられ、トラブルに発展することがあります。こうした事態を防ぐには、日頃から共有者間で意思疎通を図っておくことが大切です。

相続で共有者が増え続ける

共有状態を放置する最大のリスクが、相続による共有者の増加といえます。共有者の1人が亡くなると、その持分は相続人へ引き継がれ、共有者の数が増えていくのです。

世代を重ねるごとにねずみ算式に共有者が増え、やがて全員の把握すら難しくなってしまいます。そうなると、全員の同意が必要な売却や活用は事実上不可能になってしまいます。共有の解消は、先延ばしにするほど困難になると心得ておきましょう。

共有名義の不動産を相続した直後にやるべき手続きと、共有を解消するまでの流れは下記の記事で整理しています。今まさに相続の手続き中という方は、あわせてご覧ください。

共有状態を解消する方法

トラブルを避け、不動産を活用するには、共有状態そのものを解消するのが根本的な解決策です。主な方法を見ていきましょう。

共有者間で持分を売買・贈与する

共有者の1人が、他の共有者の持分を買い取る(または贈与を受ける)方法です。持分を1人に集約すれば、共有状態が解消され、単独所有になります。不動産を手元に残したい人がいる場合に適した方法です。

共有者同士の取引なので話がまとまりやすい反面、買い取る側にはまとまった資金が必要です。贈与の場合は贈与税がかかることもあるため、税負担にも注意しましょう。

不動産全体を売却して分ける

共有者全員が合意すれば、不動産全体を第三者に売却し、売却代金を持分に応じて分ける方法があります。共有者全員が現金を得られ、公平に分けられるため、誰も不動産を必要としない場合に有力な選択肢です。

完全な所有権として売れるため、持分だけを売るより高値がつきます。ただし、全員の同意と協力が前提になるため、意見がまとまらない場合は次の方法を検討しましょう。

共有名義の実家が空き家になっている場合は、買取業者への直接売却も選択肢に入ります。相場観や業者の選び方は下記の記事にまとめています。

自分の持分だけを売却する

他の共有者と話がまとまらない場合でも、自分の共有持分だけなら単独で売却できます。共有関係から抜けたい人にとって、他の共有者の同意なしに現金化できる現実的な方法です。

売却先は、他の共有者のほか、共有持分を専門に扱う買取業者などです。ただし、持分だけの売却は買い手が限られ、価格も市場価格を下回る傾向があります。具体的な相場や進め方は、下記の記事でくわしく紹介しています。

共有物分割請求をする

各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます(民法256条)。話し合い(協議)で分割方法が決まらない場合は、裁判所に共有物分割請求訴訟を起こして解決を図ります。

分割の方法には、現物で分ける、代金で清算する、競売にかけて分けるなどがあります。最終手段ではありますが、話し合いがどうしてもまとまらないときの法的な解決策です。訴訟の流れ・費用・期間は下記の記事を参考にしてください。

共有物件をリノベーション・活用したい場合

「共有名義の実家をリノベーションして活用したい」というニーズも多くあります。ただし、共有物件のリノベには、工事の規模に応じた共有者の同意が必要です。

リノベは行為の規模で必要な同意が変わる

リノベーションは、その規模によって管理行為か変更行為かに分かれ、必要な同意の範囲が変わります。壁紙の張り替えのような軽微な工事は管理行為として持分の過半数、間取りを変える大規模なリノベや増改築は変更行為として全員の同意が必要になるのが原則です。

どこまでが過半数で、どこからが全員の同意かは、判断が難しいこともあります。工事を始めてからトラブルにならないよう、事前に必要な同意を確認しておくことが欠かせません。

合意形成が活用のカギ

共有物件を活用する最大のカギは、共有者間の合意形成です。誰がどう負担し、どう活用するかを丁寧にすり合わせ、書面で残しておくことがトラブル予防につながります。

リノベーションの設計から施工、共有者間の合意形成のサポートまで一貫して相談できる会社なら、複雑な共有物件の活用もスムーズに進められます。共有物件のリノベーションに必要な合意形成の進め方は、下記の記事でくわしく解説しているので参考にしてください。

2021年(令和3年)の民法改正で変わったこと

共有制度は、2021年(令和3年)の民法改正で大きく見直されました。所有者不明土地の解消を目的とした改正で、共有不動産の扱いにも関わる重要な変更です。

所在不明の共有者がいても手続きを進めやすくなった

従来は、共有者の中に所在不明の人がいると、全員の同意が得られず、売却も活用もできないまま塩漬けになるケースが多くありました。改正により、裁判所の関与のもとで、所在不明の共有者を除いて変更や管理を決定できる仕組みが整えられました。

裁判所の決定を得て、所在不明の共有者の持分を取得したり、第三者に譲渡したりする道も開かれています。これにより、共有関係の解消がしやすくなりました。手続きには裁判所への申立てが必要なので、利用を検討する場合は専門家に相談するとよいでしょう。

共有持分に関するよくある質問(FAQ)

最後に、共有持分についてよく寄せられる疑問にお答えします。

共有持分と共有名義はどう違いますか?

共有名義は、1つの不動産を複数人が登記している「状態」を指します。一方、共有持分は、その共有名義において各人が持つ所有権の「割合」のことです。たとえば「兄弟3人の共有名義」で「1人あたりの共有持分は3分の1」というように使い分けます。名義が状態、持分が割合と理解すると分かりやすいです。

共有不動産を売るには全員の同意が必要ですか?

不動産全体を売却する場合は、共有者全員の同意が必要です。売却は変更(処分)行為にあたり、民法251条で全員の同意が求められるためです。ただし、自分の共有持分だけであれば、他の共有者の同意なく単独で売却できます。持分のみの売却は、価格が市場価格より下がる傾向があります。

共有不動産を賃貸に出すのに全員の同意はいりますか?

賃貸借契約は原則として管理行為にあたり、共有者の持分の価格の過半数の同意で決定できます。頭数ではなく持分割合の過半数である点に注意しましょう。ただし、長期間の賃貸借など管理行為の範囲を超える場合は、全員の同意が必要になることもあります。

共有物件をリフォームするのに同意は必要ですか?

工事の規模によって変わります。壁紙の張り替えなど軽微な工事は管理行為として持分の過半数、間取りを変える大規模なリノベーションや増改築は変更行為として共有者全員の同意が必要になるのが原則です。判断が難しい場合もあるため、工事前に必要な同意を確認しておくことが大切です。

共有状態を解消するにはどうすればいいですか?

主な方法は、共有者間で持分を売買・贈与して1人に集約する、不動産全体を売却して代金を分ける、自分の持分だけを売却する、共有物分割請求をするの4つです。状況によって最適な方法は異なります。話し合いがまとまらない場合は裁判所への分割請求もできますが、まずは専門家に相談するのがおすすめです。

まとめ|共有持分は全体像を理解して早めの対応を

共有持分について、定義・権利・トラブル・解消方法まで見てきました。要点を振り返っておきましょう。

この記事のまとめ
  • 共有持分とは、1つの不動産を複数人で持つときの所有権の割合
  • 行為は保存(単独)・管理(過半数)・変更(全員)の3区分。売却や大規模リノベは全員の同意が必要
  • 自分の持分だけなら単独で売却できる
  • 独占使用・意見対立・持分の第三者売却・相続での増加がよくあるトラブル
  • 解消法は持分の集約・全体売却・持分売却・分割請求の4つ
  • 2021年の民法改正で、所在不明の共有者がいても手続きを進めやすくなった

共有持分は権利関係が複雑に見えますが、「不動産全体に対する権利の割合」という基本と、行為ごとの同意ルールをつかめば、決して難しいものではありません。共有はトラブルに発展しやすく、放置するほど解決が困難になるため、早めの対応が肝心です。

この記事で全体像をつかんだら、気になるテーマを深掘りしてみてください。共有持分の単独売却、共有物分割請求、共有名義の不動産の相続、共有物件のリノベーションに必要な合意形成など、それぞれを掘り下げた記事を用意しています。共有持分の悩みを解決する次の一歩が見つかるはずです。


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