離婚が決まったとき、家をどうするかは最も重い問題の1つです。住宅ローンが残っている、名義は夫だが住み続けたいのは妻と子ども、連帯保証人になったままで離婚していいのか。感情の整理より先に、こうした実務が立ちはだかります。
先にお伝えすると、リースバックを使えば、家を売却してローンを完済し、売却代金を財産分与で分けたうえで、一方がそのまま住み続けることができます。連帯保証を外し、子どもの学区を変えずに済む。離婚で家が絡む問題の多くを、1つの手続きで整理できる方法です。ただし、オーバーローンや共有名義など、成立させるための条件があります。
この記事では、離婚時に家をどうするかの4つの選択肢、離婚しても消えない住宅ローンと連帯保証をリースバックで外す条件、売却代金の財産分与の計算例、住み続ける側の家賃と養育費の関係、離婚前と離婚後どちらで進めるべきか、子どもの学区を守る使い方をまとめました。監修は、訳あり不動産を中心に1,500件以上の相談を解決してきた宅地建物取引士の桐生辰宏です。
本記事は不動産取引の観点からの一般的な解説です。財産分与の割合や連帯保証の解除は個別の事情で結論が変わるため、離婚協議や公正証書の作成にあたっては弁護士にご相談ください。
離婚時に家をどうするか|4つの選択肢とリースバックの位置づけ
離婚で持ち家が絡む場合、選択肢は大きく4つです。それぞれの特徴を、離婚で問題になりやすい4つの軸で並べました。
| 方法 | 住宅ローン | 連帯保証 | 財産分与 | 子どもの学区 |
|---|---|---|---|---|
| ①名義人がローンを払い続け、相手が住む | 継続。名義人が払えなくなるリスク | 残る | 家の評価額を基に他の財産で調整 | 維持できる |
| ②住む側に名義とローンを移す | 住む側が新規に審査を通す必要あり | 借り換えできれば外れる | 評価額を基に調整 | 維持できる |
| ③通常売却して分ける | 完済 | 外れる | 売却代金を分ける(最も明確) | 引越しで変わる可能性 |
| ④リースバックで売却し、一方が住み続ける | 完済 | 外れる | 売却代金を分ける | 維持できる |
リースバックが選ばれる3つの状況
①は「元夫が払わなくなったら」という不安が消えません。②は住む側(多くの場合、収入の少ない側)が住宅ローンの審査を通す必要があり、現実には難しいことが多い。③は最も明確ですが、子どもの転校が避けられません。
④のリースバックは、③の「明確さ」と①②の「住み続けられる」を両立させる方法です。相談の現場では、次の3つの状況で選ばれています。
- 子どもの学区を変えたくない。転校を避け、通学路や友人関係を維持したい
- 住み続けたい側が住宅ローンの審査に通らない。専業主婦・パート収入で名義とローンの引き受けができない
- 連帯保証・連帯債務を確実に外したい。離婚後も元配偶者の返済リスクを負い続けたくない
リースバックの仕組みそのものは、以下のピラー記事で整理しています。

離婚しても住宅ローンと連帯保証は消えない|リースバックで解消できる条件
離婚協議で「家のローンは夫が払う」と決めても、それは夫婦間の約束にすぎません。金融機関との契約は、離婚では1ミリも動きません。
離婚協議は金融機関に効かない
住宅ローンは、借主(名義人)と金融機関の契約です。離婚届を出しても、公正証書で「夫が払う」と定めても、金融機関から見た債務者は変わりません。妻が連帯保証人なら、夫が滞納した瞬間に妻へ請求が来ます。数年後、元夫の生活が変わって返済が止まり、身に覚えのない督促状が届く。こうした相談は珍しくありません。
連帯保証・連帯債務・ペアローンの違い
| 形態 | 仕組み | 離婚後のリスク |
|---|---|---|
| 連帯保証 | 夫が借主、妻が保証人 | 夫が滞納すると妻に全額請求。妻に返済義務があるのに家の持分はない |
| 連帯債務 | 夫婦2人がともに借主(1本のローン) | どちらも全額の返済義務。片方が払わなくても他方が払い続ける |
| ペアローン | 夫婦がそれぞれローンを組み、互いに連帯保証 | 2本のローンと2つの保証が絡み、最も解消しにくい |
どの形態でも、離婚後に保証や債務から外れるには、金融機関の同意を得て契約を変える(借り換え・保証人の変更)か、ローンを完済するかしかありません。前者は住み続ける側の収入で審査が通る必要があり、現実には難しいケースが大半です。
売却代金で完済できれば保証は消える。オーバーローンなら残る
リースバックで家を売り、その代金でローンを完済すれば、抵当権は抹消され、連帯保証も連帯債務もペアローンもすべて消えます。離婚でリースバックが効く本当の理由は「住み続けられる」ことより「保証関係を確実に断ち切れる」ことにあります。
ただし、売却価格がローン残債を下回るオーバーローンの状態では、完済できないため抵当権が外れず、そのままではリースバックが成立しません。任意売却との併用など、成立させる方法は別記事で解説しています。

リースバックの売却代金はどう分ける?財産分与の計算
家を売った代金は、婚姻期間中に築いた共有財産として財産分与の対象になります。名義がどちらか一方でも同じです。
原則は2分の1。名義や収入の差は関係ない
財産分与は、婚姻中に夫婦で築いた財産を原則として2分の1ずつ分ける制度です。家の名義が夫だけでも、ローンを夫の収入で払っていても、婚姻中に取得した家なら共有財産。専業主婦の家事や育児は財産形成への貢献として認められるため、分与の割合が下がることは基本的にありません。
特有財産(婚前の頭金・親の援助)は先に差し引く
ただし、結婚前の貯金から出した頭金や、一方の親からの資金援助は「特有財産」として分与の対象から外れます。たとえば夫の親が500万円を援助していた場合、その分は夫の取り分として先に確保し、残りを2分の1ずつ分けるのが一般的な考え方です。援助の証拠(振込記録・贈与契約書)があるかで扱いが変わるため、書類を探しておいてください。
計算例|売却価格2,400万円・残債1,000万円・親の援助500万円
| 項目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| リースバックの売却価格 | 2,400万円 | 市場価格3,200万円の7.5割 |
| 住宅ローン残債の返済 | −1,000万円 | 完済し抵当権を抹消 |
| 売却時の諸費用 | −5万円 | 印紙税・登記費用 |
| 分与前の手残り | 1,395万円 | |
| 夫の特有財産(親の援助) | −500万円 | 夫の取り分として先に確保 |
| 分与の対象額 | 895万円 | |
| 夫の取り分 | 500万円+447.5万円=947.5万円 | |
| 妻の取り分 | 447.5万円 |
売却代金は業者から名義人の口座に振り込まれるため、分与分を相手に渡す手続きが別途必要です。渡す金額と時期は、必ず離婚協議書か公正証書に書いてください。売却価格の相場と手残りの考え方は、以下の記事で解説しています。

住み続ける側の家賃は誰が払う?養育費との関係
リースバック後の賃貸借契約は、住み続ける側が借主として結びます。ここで問題になるのが、家賃をどう負担するかです。
借主は住み続ける側。審査は本人の収入で見られる
元夫が売主で元妻が住み続ける場合、賃貸借契約の借主は元妻になります。業者は借主の家賃支払い能力を見るため、パート収入だけで家賃15万円の契約は難しいこともあります。ただし、養育費や婚姻費用の受け取りが公正証書で確定していれば、収入として考慮してくれる業者もあるでしょう。契約前に、家賃の原資をどう説明するかを整理しておいてください。
家賃を養育費に組み込むという考え方
子どもが住む家の家賃を、養育費の一部として元夫が負担する取り決めは、実務ではよく行われます。たとえば養育費を月8万円とし、それとは別に家賃15万円のうち5万円を元夫が負担する、という形です。金額の決め方に法律上の決まりはなく、双方の収入と子どもの年齢を踏まえた協議によります。
注意したいのは、元夫が家賃を直接業者に払う形にすると、元夫が払わなくなったときに借主である元妻が滞納扱いになる点です。家賃は借主が払い、元夫からは養育費として受け取る。お金の流れはこの形にしておく方が安全です。
公正証書に書いておくべき項目
- 売却代金の分与額と、相手に渡す時期・方法
- 家賃の負担割合と、元配偶者の負担分を養育費に含めるか別建てにするか
- 負担の期間(子どもの高校卒業まで、など)
- 買戻し特約がある場合、買戻しの権利を誰が持つか
- 支払いが滞った場合の強制執行認諾文言
家賃の相場と、売却価格を調整して家賃を抑える交渉については、以下の記事を参照してください。

リースバックは離婚前・離婚後どちらで進めるべきか
タイミングで手続きと税金が変わります。結論から言うと、離婚前に売却して代金を分ける方が、手続きも税金もシンプルです。
| 項目 | 離婚前に売却 | 離婚後に売却 |
|---|---|---|
| 手続きの流れ | 売却→代金を財産分与で分ける→離婚 | 離婚→財産分与で名義を移す→住む側が売却 |
| 名義移転の税金 | 不要(名義人がそのまま売る) | 分与による移転に登録免許税2%。不動産取得税は原則非課税 |
| 3,000万円控除 | 名義人が居住していれば使える | 分与で名義を受けた側が居住していれば使える |
| 期限 | なし | 財産分与の請求は離婚から2年以内 |
| 向いている状況 | 協議が整っており、早く保証を外したい | 離婚を先に成立させたい、分与の協議が長引く |
離婚前に売却する場合の注意点
売却代金が名義人の口座に入った状態で離婚すると、分与分を渡してもらえないリスクがあります。売却と同時に分与額を相手に振り込む、または公正証書に金額と期日を明記してから売却する。この順番を守ってください。
離婚後に売却する場合の注意点
財産分与で名義を住む側に移してから売る場合、ローンが残っていると金融機関の承諾なしに名義を変えられません。多くのローン契約では、無断で名義を変えると一括返済を求められる条項があります。ローン完済が先か、名義変更が先か。順番を金融機関と業者の両方に確認してから動いてください。
別居中に進める場合
別居中で名義人が家にいない場合でも、売却の意思は名義人が示す必要があります。査定・契約・決済のすべてに名義人の関与が必要なので、連絡が取れない状態では進みません。話し合いが難しい場合は、弁護士を通じて売却の同意を取り付けるのが現実的です。
子どもの学区・生活環境を守るためのリースバックの使い方
離婚でリースバックを選ぶ最大の動機は、子どもの環境を変えないことです。この目的に合わせて、契約の組み方も変わります。
転校・通学路・友人関係をそのまま維持できる
通常売却なら、引越し先の学区によっては転校が避けられません。親の離婚と転校が同時に起きる負担は、子どもにとって小さくないものです。リースバックなら住所も学校も変わらず、子どもの日常は離婚前と同じまま。親の側も、引越しの手間と費用をかけずに新しい生活を始められます。
普通借家契約を選ぶ理由
子どもの卒業までという数年単位の居住が前提なら、2〜3年で満了する定期借家契約は不向きです。再契約を断られたら、離婚に加えて転校まで重なります。借主が希望する限り更新できる普通借家契約か、定期借家でも卒業年度までの期間と再契約条項を書面で確保してください。契約の種類による違いは、以下の記事で解説しています。

「卒業まで」という期限付きの使い方
「子どもが高校を卒業する5年後まで住み、その後は実家近くの賃貸に移る」といった期限付きの使い方は、リースバックと相性がいいものです。住む年数が決まっていれば、家賃総額を先に計算でき、売却代金のうちいくらを家賃に充てるかも見えます。5年間・家賃15万円なら900万円。分与で受け取る額と養育費で賄えるかを、契約前に試算しておいてください。

子どもが小学3年生で、あと3年は転校させたくないんです。3年だけ住む前提でも相談できますか?



むしろ期限が決まっている方が条件を組みやすいです。3年の定期借家なら業者側も転売時期が読めるので、売却価格を上げてもらえる余地があります。
離婚×リースバックで注意すべき3つのこと
手続きの流れが見えたところで、離婚特有の落とし穴を3つ確認しておきます。どれも相談の現場で実際に起きているものです。
注意①一方が勝手に契約できない(共有名義・夫婦共有財産)
家が夫婦の共有名義なら、売却には両方の同意と署名が必要です。名義が一方だけでも、婚姻中に取得した家は財産分与の対象なので、相手に無断で売って代金を独占すれば、後から分与請求を受けます。「離婚前に売り逃げる」ことはできないと考えてください。共有名義のまま話が進まない場合の選択肢は、以下の記事で整理しています。


注意②買戻し特約を誰が持つか決めておく
将来買い戻す可能性があるなら、買戻しの権利を売主(元夫)が持つのか、住み続ける側(元妻)が持つのかを決め、契約書と公正証書の両方に書いておく必要があります。元夫が買戻し権を持ったまま行使すれば、元妻は家主が元夫に変わった状態で住むことになります。買戻しの仕組みについてはこちらを参照してください。


注意③元配偶者の名義が残る状態で放置しない
「とりあえず離婚して、家のことは後で」と名義もローンもそのままにするのが最も危険です。元夫が再婚して返済を止めた、元夫が亡くなって相続人が現れた、元夫が自己破産した。どれも家を失う事態につながります。離婚から2年の財産分与の請求期限を過ぎると、法的に分与を求めることも難しくなります。家の問題は離婚と同時か、遅くとも数か月以内に片付けてください。
離婚とリースバックに関するよくある質問
- 夫名義の家に、離婚後も妻がリースバックで住み続けられますか?
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できます。売主は名義人である夫、賃貸借契約の借主は妻という形で契約します。売却には夫の同意と手続きへの関与が必要で、妻は借主として家賃の支払い能力を審査される点に注意してください。養育費や婚姻費用が公正証書で確定していれば、収入として考慮する業者もあります。
- 専業主婦でも売却代金の半分をもらえますか?
-
婚姻中に取得した家であれば、名義や収入にかかわらず原則として2分の1が分与の対象です。家事や育児も財産形成への貢献として認められるからです。ただし、結婚前の貯金や一方の親からの援助で支払った頭金は特有財産として先に差し引かれるため、実際の取り分は残債と特有財産を引いた後の金額の半分になります。
- 離婚後も連帯保証人のままだとどうなりますか?
-
元配偶者が住宅ローンを滞納すると、金融機関から保証人に残債の一括返済を求められることになります。離婚協議や公正証書で「夫が払う」と定めても、金融機関に対しては効力がないのです。保証から確実に外れるには、ローンを完済するか、金融機関の同意を得て保証人を変更するしかなく、リースバックによる売却・完済は前者の方法にあたります。
- オーバーローンの状態で離婚する場合はどうすればいいですか?
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売却価格がローン残債を下回る場合、そのままではリースバックが成立せず、財産分与の対象になる財産もありません(負債は原則として分与の対象外)。金融機関の同意を得て売却する任意売却とリースバックを組み合わせる方法や、残債を分割で返済しながら住み続ける方法があります。早めに弁護士と不動産業者の両方に相談してください。
- 相手が売却に同意してくれない場合はどうなりますか?
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名義人または共有者の同意がなければ売却はできません。話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所の調停や審判で財産分与の方法を決めることになります。調停では家の処分方法(売却・名義移転・住み続ける側の決定)を含めて協議できるため、弁護士に依頼して手続きを進めるのが現実的です。
まとめ|離婚時のリースバックは「保証を外す」「代金を分ける」「住み続ける」を同時に叶える
離婚しても住宅ローンと連帯保証は消えません。リースバックで家を売却してローンを完済すれば保証関係は断ち切れ、売却代金は財産分与で分けられ、一方は借主として住み続けられます。子どもの学区を変えずに済むのも大きな利点です。ただし、オーバーローンでは成立せず、共有名義や買戻し権の扱いは事前の取り決めが欠かせません。
- 離婚時の家の選択肢は4つ。リースバックは「完済で保証を外す」と「住み続ける」を両立できる
- 離婚協議は金融機関に効かない。連帯保証・連帯債務・ペアローンは完済しなければ消えない
- 売却代金は残債と特有財産を引いた残りを原則2分の1で分ける。名義や収入は関係ない
- 住み続ける側が借主。家賃の負担割合と養育費の関係は公正証書に明記する
- 離婚前の売却がシンプル。離婚後なら財産分与の請求期限2年に注意。名義を放置しない
株式会社CLOUD HOMeでは、宅地建物取引士が1,500件以上の訳あり不動産の相談を扱ってきた経験をもとに、離婚に伴う自宅の売却について、リースバックと通常買取の両方の条件をご提案しています。財産分与や連帯保証の法的な整理が必要な場合は、提携する弁護士へおつなぎしますので、「まず家がいくらになるか知りたい」という段階からご相談ください。










